その時、ふっと自分の中にもうひとつの強い気配を感じた。
「眞奉?」
頭の中に「はい」と彼女のいつも通りの返事が響く。どうやら無事に戻ってこれたようだ。
「大丈夫? 怪我はない? 黒狐族はどうなった?」
「お、巫寿の神使が帰ってきたのか?」
ひとつ頷くと、来光くんがぽんと手を叩いた。
「ねぇ巫寿ちゃん、騰蛇に出てきてもらってよ!」
「え? あ、うん。眞奉出てこられる?」
言い終わるとほぼ同時に目の前に強烈なオレンジ色の光が現れた。暗闇に慣れた目が光を捉えて頭の奥を刺す。
ぐはっ、と呻きをあげて歪んだ皆の顔が見えて「あっ」と声をあげる。
そうだ、眞奉の翼は炎を纏っている。暗闇の中にパッと光が咲いて光が差した。
「見えるって素晴らしいね……慶賀のアホ面が恋しくなる時が来るとは思わなかったよ」
「おい来光テメェ喧嘩売ってんのか」
軽口を叩くみんなの顔は幾分か明るい。私も沈みこんでいた気分が少しばかり浮上した気がした。
みんなで焚き火を囲うように眞奉の周りを取り囲んだ。
「私は変わりありません。黒狐族には逃げられました」
「そっか。時間を稼いでくれてありがとう。眞奉が無事でよかった。ゆっくり休んでてって言いたいところなんだけど、もうしばらくそこにいてくれる?」
「承知しました」
ひとつ頷いた眞奉は無言で私を見つめながらその場にじっと立つ。視線は若干気まずいが灯りがあるのとないのとじゃ大違いだ。



