当たり前だ。どれだけ優秀で落ち着きがあったって恵衣くんは私と同じ17だ。こんな状況でいつもと変わらず冷静でいられるはずがない。
手の冷たさは、恵衣くんの緊張と焦りを物語っている。
恵衣くんのことだ。自分の指示で鬼門に飛び込んで道を見失ってしまったことに責任を感じているのだろう。この中に恵衣くんを責める人なんて、一人もいるはずがないのに。
「みんなで考えよう。これまでみたいに」
そう言って今度は私がその手を強く握った。少しでも自分の熱が移って、冷え切ったその手のひらが温まればいいと思った。
恵衣くんの身体から力が抜ける感覚がして、深呼吸をする音が聞こえる。これも恵衣くんの癖、何か起きた時にこうしてよく深く息を吐いている。
恵衣くんは冷静なんじゃなくて、きっと冷静でいるために人一倍努力できる人なんだろう。
「……別に背負ってなんかない。でも、まぁ、お前らの意見も聞いてやらんでもない」
そんな物言いがおかしくてプッと吹き出す。
だいぶ性格は丸くなったけれど、相変わらず「ごめんね」と「ありがとう」だけはずっと下手くそだ。
みんなが「疲れたー!」と悲鳴を上げながらどさどさとその場に座り込む。私も腰を下ろすと、繋いでいた手はすっと離れる。
手のひらに残った熱が逃げていくのが何だか惜しくて、胸の前でぎゅっと握りしめた。



