何時間歩いたのか、もしくはまだ数分しか経っていないのか。時間経過がわかるものといえば足裏の痛みと全身の疲労感くらいだった。
どこまでも続く暗闇と静寂は確実に私たちの五感を狂わせていく。自分がまっすぐ立っているのかすら分からなくなって、もう五回以上転びそうになっては恵衣くんに助けられた。
「お前ら、そこにいるよなぁ……」
「いるよー……」
最初は不安を紛らわせようと喋っていた皆も、疲れがピークに達しているのか声にハリがない。誰も口にはしないけれど、もうきっと限界に近いはずだ。
「恵衣、少し休もう。もうみんな限界だ」
恐らく最後尾を歩いていた嘉正くんが軽くロープを引っ張った。
釣られるようにみんなが足を止めて深く息を吐く。
「同じ場所に留まっていたら、いつまでも外には出られないぞ」
「でも、がむしゃらに歩いたからって鬼門が見つかる訳じゃない。一旦作戦を立てよう」
「じゃあお前は鬼門を見つけられる作戦を立てられるのかよッ……!」
恵衣くんが声を荒らげたことに驚いた。方向を見失った時ですら落ち着いて私たちに指示を出していたのに感情的になっている。
「恵衣のせいじゃない。全部一人で背負うなよ」
諭すような嘉正くんの優しい声に握っていた手が微かに震えた。そして気付く。長い間握っていたはずの手はずっと冷たかった。



