しなやかで長い指に少し冷たい指先、少し筋張ったさらりとした手のひら。いつも迷わず私を導いてくれるその手は、気付けば確かめなくても分かるようになっていた。
縋るようにその手を握ると、応えるように力が込められた。
冷たい手のひらが緊張を和らげて、落ち着きを取り戻させてくれる。
「通ってきた方の鬼門が近い。ここに留まっていたら黒狐族が追いかけてくる可能性もある。とにかく進むぞ」
いつもと同じ冷静な声がすぐ隣で聞こえる。どうして恵衣くんはそんなに平然としていられるのだろうか。
暗闇であることに感謝した。こんな緊急事態だと言うのに、やたら頬が熱かった。



