言祝ぎの子 結 ー国立神役修詞高等学校ー


嘉正くんたちが鬼門の中へ入ってから、45分が経過した。捜索時間残り15分を知らせるためにロープを15回軽く引っ張れば「了解」のサインが帰ってくる。

捜索組も問題ないようで一安心だ。


「分かってはいたけど、やっぱり一回の捜索じゃふくらの社は見つけられないよね」


ため息を零した来光くん。

そう簡単に見つかるとは思っていなかったけれど、たしかこの捜索をあと何回続ければ発見に至るんだろうか。


「馬鹿なのかお前。こんなやり方で見つかっていたら、とっくに本庁の役員連中が発見してるはずだ」

「分かってはいたけどって言っただろ! 愚痴こぼすくらいいいじゃないか!」


ふん、と馬鹿にしたように鼻を鳴らした恵衣くん。

相変わらず仲がいいのか悪いのかよく分からない二人のやり取りに肩を竦めた。

来光くんの愚痴をこぼしたくなる気持ちも分かるけれど、初回は無事に二人が帰ってこれればそれだけで大きな収穫だ。

ロープの強度も問題ないみたいだし、この調子で明日からも捜索を続けていればいつかは。


椎名(しいな)巫寿か?」

「え? どうし────」


ゆっくり考えれば違和感は山ほどあった。

私の周りに私のことをフルネームで呼ぶ人間はいないし、そもそもその声は恵衣くんでも来光くんでもなかった。

きっとどこか油断していたんだと思う。