言祝ぎの子 結 ー国立神役修詞高等学校ー


近頃は肌を突き刺すような冷気の中に、春の日差しの温もりが僅かに感じられるようになった。日当たりのいい縁側には、よく庭に忍び込んでくる猫が昼寝をしている。

近所の桜は五分咲きといったところか。見頃まであと少しで、たまにレジャーシートを広げて花見をしている隣人を見かけた。


朝ご飯を食べたあと、皆で神棚に手を合わせ成功祈願の祝詞を奏上し家を出た。

目指すは鬼脈だ。まずは鬼脈に入って、鬼脈側の鳥居に向かう。調べたところによると「むしなの社」というお社が、以前ふくらの社があった場所の近くにあるようだ。そこの鬼門を使って鬼脈に入れば、より近い位置から捜索できるかもしれないと考えた。

近所にあるわくたかむの社の分社はもう機能していないけれど、薫先生が鬼門だけは管理しているらしい。

鬼門の前まで来た私たちは顔を見合せた後、迎門の面を深く被った。お手製ロープは五分割にして、それぞれリュックサックや鞄に隠して持っている。


「行こう」


私たちの先頭を行くのはやはり嘉正くんだ。

ぐっと顎を引いて力強く頷く。そして私たちは鬼脈に足を踏み入れた。