「そんな無茶な」
「先見の明があんだろ」
「私の授力はそんな都合のいいものじゃないってば」
べ、と舌を出すと恵衣くんが少し表情を和らげてプッと吹き出す。私もつられてくすくすと肩を揺らした。
話題は昨日放送されたバラエティ番組の話に切り替わる。あの芸人がさぁ、と楽しそうに語らうみんなの顔を眺めた。
この瞬間だけは、休み時間に教室で語らっていたあの頃に戻ったみたいで肩の荷が降りた。そして思い出す。私がどうして神修から離れることに決めたのか。
私はこの笑顔を守るために、戦うことに決めたんだ。
試せることは全て試そう。みんなを守るため、この瞬間を来年も再来年も、みんなと過ごすために。



