そろりと小さく手を挙げた。
「そもそもの話なんだけど、ふくらの社って消えちゃったんだよね? なのになんで、鬼脈のどこかにあるって分かるんだっけ」
「ああ、ややこしいよねそこ。説明するから誰か紙とって」
来光くんはその辺にころがっていたノートとボールペンを「ほい」と差し出した。
適当なページをバリッと破いた嘉正くんは、上下に楕円を書いてそれぞれに「現世」「幽世」と名付ける。
「そもそもお社が鬼脈にあるものだってことは授業で習ったよね」
現世と書かれた楕円に「社」と書かれた四角形をくっつけて描く。私はひとつ頷いた。
現世に存在する社は誰にでも目に見えるし触れることもできるけれど、存在しているのは鬼脈の中だ。現世と社を繋ぐ表の鳥居を通過することで、中へ入ることができる。
「で、ふくらの社は空亡が発生した時点でやつを社に閉じ込めようと両方の鳥居を閉じたでしょ? 文字通り人も妖も通れないようにした」
嘉正くんは社の鳥居にバツ印を書いた。
「つまり、社は鬼脈上に存在するけど出入口がないわけ。これが「ふくらの社が消えた」って言われてる仕組み」
なるほど、と顎をさすり図が描かれたノートの切れ端を持ち上げる。
具体的に言うと、「ふくらの社は鬼脈のどこかに消えた」ということか。



