来光くんの大学芋が完成したので、一旦作業は中断になった。皆でお茶の用意をして円卓を囲う。
「で、ロープを腰に巻いて鬼脈に潜り込むって? 無茶苦茶だね」
呆れた顔で湯のみのお茶を啜った来光くん。
恵衣くんが「俺は賛成してない」と小さな声で反抗する。よっぽど今回の作戦に納得がいっていないらしい。
まぁ恵衣くんの口からは絶対に出てこないようなアイディアだもんね。
「しかもこんなにしょぼいロープで」
「ショボイって言うなよ! ロープなんて店で買ったらクソ高いんだぞ、百メートルで5万以上するんだからな!?」
ロープが高いのはさておき、ロープひとつで鬼脈を探索するのは現実的なんだろうか。
鬼脈というのは現世と幽世を繋ぐ広大な空間だ。本来はただの暗闇が広がっている場所だけれど、現世と幽世を行き来するために道が整えられ、次第に宿場町のような場所も形成された。
逆に言えば、通り道と街以外の場所は前も後ろも分からないただの暗闇というわけだ。
たしかに命綱代わりのロープを繋いで鬼脈に潜れば戻って来れないこともないだろうけれど、無限に続く空間の中を歩いて探すのはあまりにも非現実的だ。
「そうするしか、ふくらの社の行方を探す方法がないんだよ! じゃあお前は他にいいアイディアがあんのか?」
知らないよ、そっちの担当でしょ。
眼鏡を押し上げながら大学芋を頬張った来光くんはしれっとした顔で答えた。



