言祝ぎの子 結 ー国立神役修詞高等学校ー


今へ続く廊下の角を曲がると、床の上に三つ編みされた細い布が置いてあった。目線でそれを辿ると、居間の方から続いている。

なにこれ?と手に取って辛く引っ張ってみると、「あっ! 誰だよ! 引っ張るな!」と居間の方から文句が飛んでくる。

咄嗟にごめん!と叫べば慶賀くんが顔を出した。


「なんだ巫寿か。それ触んないで、いま作業中だから!」

「作業中? 一体何してるの?」


手招きされて、首を捻りながら今へ足を踏み入れる。真っ白なシーツの海の中に座り込んだ三人が、必死に何かを編んでいた。


「これ、何してるの?」

「クソ長いロープ作ってんだよ。買うと高いじゃん?」


ロープ?と足元に転がる白い紐を手に取る。シーツを細く割いて三つ編みにしたものだ。慣れていないのかたまに編み目がおかしくなっている。


「なんでロープ?」

「鬼脈に潜るためだよ」


嘉正くんが答えると、恵衣くんは酷く顔を歪めて苦い顔をした。


「恵衣は"こんなの馬鹿げてる"って言うんだけど、ふくらの社を見つけ出すための現状のベストアンサーはこれしかないんだよね」

「えっと、つまり?」


慶賀くんが立ち上がって、網掛けのロープをぐるぐると体にまきつける。


「鬼脈のどこかに消えたふくらの社を、歩いて探すってわけ!」


自信満々に胸を叩いた慶賀くん。恵衣くんの深いため息が響く。


歩いて探す……?

いったいどういうこと?