当時、空亡戦はずさんな管理体制のせいで多数の死者を出し、戦線へ学生が動員されることもあった。
その失態を隠蔽するためなのか空亡戦に関する資料は全く残っておらず、調べるには当時の人たちに話を聞くくらいしかない。
「現場にいた人達は聞いてなかったのかな? 禄輪禰宜は前審神者のそばに居たんでしょ?」
「記録だとそうだよね」
志ようが一部を祓った後、空亡が弱った隙を狙ってすかさず禄輪さんが天津祝詞を奏上しさらにその一部を祓い、その後残った残穢は全国各地へ散っていった。
この通り禄輪さんが奏上した祝詞についての仔細は残っているのに、志ようさんに関する情報はなぜかまるっと抜け落ちている。
「学校をこっそり抜け出してるこの状況で禄輪禰宜に電話して聞くのも、だよね」
「そうだね。そもそも禄輪さんがその場で聞いていたならちゃんと本庁に報告して、記録に残るようにしているはずだし」
だよねー、と疲れたようにため息をついた来光くん。
やはり既存する記録には何も記されていないのだろうか。
「あ、巫寿ちゃんは居間を見てきてもらっていい? 多分嘉正チームが使ってると思うから、オヤツ食いたかったら片付けろって伝えて」
了解、と伝えて廊下の途中で別れた。



