「不安なこと全部、この寝顔を見てたら頭の隅っこに追いやられちゃう」


皆の顔が温かく解けた。


「ほんとだよ。こんな荒れた時代に、よく来てくれたもんだ」

「戦の前触れはあっても、赤ちゃんは平和の前触れだね」


友人らがうんうんと頷く。静かに、力強く。




「この子は、巫寿は────俺たちの希望だな」




願いというより、それは小さな祈りだった。
祈りというより、それは確かな予感だった。


陽だまりは少しずつ傾きはじめて、縁側の影が長く伸びる。

笑い声はしばらくのあいだ、やわらかく、やさしく、午後を照らし続けていた。