言祝ぎの子 結 ー国立神役修詞高等学校ー


みんなの表情が明るくなる。決まりだ。

でも、本当にそれでいいんだろうか。

嘉正くんがこっそり買ってきてくれた迎門(げいもん)の面をみんなに配った。「はい巫寿」と面を差し出す。

受け取るのに躊躇っていると、嘉正くんは眉尻を下げて笑った。


「どんなことがあろうと、みんなで戦おう」

「そーだよ! 誰一人死なせねぇ!」

「うんうん。空亡を倒して、巫寿ちゃんも助かる方法を皆で探そう」


強い力で肩を叩かれる。頼もしい手だ。

ギュッと唇を噛み頷く。みんなの気持ちが嬉しくて、また涙が溢れてしまいそうだった。


「行くぞ、巫寿」


面を少しだけ持ち上げて恵衣くんが私を見た。いつもと変わない落ち着いた表情で、空いた手を私に手を差し出す。

これからのことなんて分からない。皆を困難な状況に巻き込むかもしれない。もっと辛いことが、この先待っているかもしれない。

けれど差し出されたこの手に、少しは縋ってもいいのだろうか。強く引っ張ってくれるこの手に、身を任せてもいいのだろうか。