「────みんな用意できた?」
十分後、各々に荷物をまとめた私たちは裏の鳥居に集まった。大鳥居から出れば神職に見つかるかもしれない、という恵衣くんの提案だった。
「にしてもこの後はどうするんだよ? 春先とはいえまだ夜は冷えるし、野宿するにはキツイんじゃね?」
ダウンコートのフードを被った慶賀くんが赤い鼻をすんとすすって白い指先に息を吹きかける。
「かむくらの屯所に一旦泊まるのはどうだろう? あれこれ理由をつけて次の日にすぐ発てば何とかなるんじゃないかな」
「馬鹿なのかお前。あそこには神修の教師もいるんだぞ。学生が揃って深夜に訪ねてきたら、一発で学校側へ連絡が行く」
たしかに、と嘉正くんが眉根を寄せた。
かむくらの神職には嬉々先生や薫先生、漢方薬学の豊楽先生も所属している。集会所であるかむくらの屯所にも頻繁に出入りしているので、間違いなく見咎められるだろう。
みんなは神妙な顔つきで「どうする?」と目配せをする。
やっぱり私一人だけで行った方が。
「あ、だったらウチくる?」
ポンと手を打ったのは来光くんだった。
来光くんは今訳あって親元から離れており、長期休暇の際にも実家ではなく薫先生の家に帰っている。
「薫先生普段は教員の独身寮に帰ってるから、僕が長期休暇の時しか家には帰ってこないんだよ。充分広いし他人の目もないし、暫く隠れ家にするには最適だと思う」



