泰紀くんの実家は山奥の田舎にあるお社だと聞いている。宮司は泰紀くんのお父さんだけれど、ご両親は空亡戦で大変な怪我を負い実質やりくりしているのは泰紀くんと泰紀くんのおじいさんだ。
ボロくて貧乏な社、とよく表現しているけれど、行事ごとがある時は必ず帰省していたし、学校がある日は公欠届けを出して神事を手伝いに行っている姿を見たことがある。
それだけ泰紀くんがお社や氏子を大切にしているということだ。
そして私の親友であり、泰紀くんの恋人である恵理ちゃん。
二人の出会いは1年の時で、付き合いだしたのは二年生の夏頃だった。
泰紀くんから話を聞くことはなかったけれど、恵理ちゃんからは毎日のように色んな話を聞いていた。
休みの日は待ち合わせをして門限ギリギリまで出かけたり、お互いに眠りにつくまで電話をしたり。
幸せそうに報告してくれる恵理ちゃんを見ていれば、泰紀くんがどれだけ恵理ちゃんを大切にしているのかはよく分かった。
「もちろん離れた場所からでも手伝えることがあるなら何でもする。でも、ここから先はお前らだけで行け。俺は、ここに残って大切な人を守る」
私が皆や家族を守りたいと思うように、泰紀くんも実家の社と恵理ちゃんを守りたいと思っているんだ。
みんなそれぞれ守りたいものがあって大切な人がいる。泰紀くんは自分が大切にしたい人たちを守るためにここに残ると決めた。その決意を咎めることなんて誰もできるわけがない。



