恵衣くんがゆっくり手を離した。
「迷惑をかけるだとか、皆を守らなくちゃだとか、余計なことは考えるな。俺はただ、自分の正義に忠実でいたいだけだ」
それは何よりも恵衣くんらしい言葉だ。素っ気ないようにみえて、その奥に隠れている優しさをちゃんと感じる。
「俺らみんな、どこまでも巫寿と一緒に戦うよ」
ああ、ああ。
みんなの言葉が、優しさが、私を包み込み抱きしめる。恐怖も不安も何もかも吹き飛ばして、「大丈夫だ」と思わせてくれるよに力強く背中を支えてくれる。
涙が止まらない。でもこれは嬉し涙だ。
何度も何度も目尻を擦って、肩を、背中を叩いてくれる皆に頷く。
先のことなんて分からない。けれどもみんながいれば、きっと何とかなるような気がしてくる。全てが上手くいくような、未来が言祝ぎで溢れているよな。
「泰紀、お前もこっち来いよ! 何そんなとこで突っ立ってんだよ〜」
慶賀くんが振り返った。その場に立ちすくみ唇を結んでじっとこちらを見つめる泰紀くんに呼びかける。
「泰紀? どうし……」
「俺は」
慶賀くんの言葉をさえぎった。
皆が振り返る。
「────俺は、お前らとは一緒に行けねぇ」



