言祝ぎの子 結 ー国立神役修詞高等学校ー


一番に私の前に飛び出してきたのは来光くんだった。鼻を真っ赤にして目を潤ませ、私の事を力強く見つめる。


「覚えてる? 一年の時の神社実習で僕が塞ぎ込んだ時さ。皆のこと遠ざけたのに、無理やり部屋のドアこじ開けて手引っ張って外に連れ出してくれたでしょ?」


忘れるわけがない。あの日、来光くんはどんな人生を歩んできたのか、何に苦しみ何を抱えているのかを私たちに打ち明けてくれた。


「だから今こうしていられる。だから巫寿ちゃんがどれだけ僕を遠ざけようと、僕はしてもらった事と同じ事をするよ。絶対に一人にしたりしない」


ふふ、とメガネを押し上げて笑った来光くんの笑顔が涙で歪んだ。

来光に先こされちゃったな、そう言いながら隣に並んだ嘉正くん。同じように泣きそうな顔で「水臭いよ巫寿」と私の肩を軽く叩いた。


「同じ教室で学んで、同じ失敗をして、同じように成長したきたんだよ。去る時も戦う時もこれから先の未来も。ずっと俺たちは仲間だ」


胸の中に熱いものが溢れる。冷えきった身体を巡って、全身に力がみなぎってくる。

「俺も俺も!」そう二人の間から顔を出した慶賀くんは、豪快に鼻を啜ってニカッと笑う。


「俺が内通者だってバレたあの日さ、巫寿は言ってくれたよな。"だれよりも神職だ"って。あの言葉があったから、俺は腐らずにやり直そうと思えた。これはそんな巫寿への恩返しだ」