「それに芽さんは私を狙ってる。このままじゃ私の傍にいる皆が危ないの。私はもう、大切な人が傷付く姿を見たくない」
人形のように温かみの消えた白い肌。光が消えたうつろな瞳。何かを言いかけたように半開きになった唇。命の炎が消えるのは本当に一瞬だった。
何度も何度も思い出す度に心臓が握りつぶされるように傷んだ。
「皆を巻き込みたくない。本当に危険なの。死ぬかもしれないんだよ……!」
「だからってお前一人がここを去って何ができるんだよ」
冷静な言葉が胸に刺さる。
そんなこと分かっている。今まで何度も誰かに守られみんなの力を借りてきた。結局私一人じゃ何もできない。
「分からないよ! でももう、皆を守るには私が行くしかないの……ッ!」
自分の嗚咽が静かな夜空に響く。
何度も袖で顔を拭った。
涙を止めないと。じゃないとみんなが不安になる。心配をかける。今すぐ涙を止めて、さよならを伝えて、振り返らずに歩き出さないと。
「────俺たちは」
顔を上げた。恵衣くんの力強い視線が私を射抜く。
雲が風に流されて隠れていた月がゆっくりと顔を出す。眩しいほどの白い光が、私たちを優しく照らした。
「俺たちは、巫寿に守られるだけの存在か?」
ばくん、と心臓が大きく脈打った。全身が震える。武者震いみたいだった。



