言祝ぎの子 結 ー国立神役修詞高等学校ー



「では一問目だ」


三人の顔を見下ろし、文車妖妃は閉じていた扇子をパッと開き不敵な笑みを隠す。

泰紀はごくりと唾を飲み込んだ。


「ここに傷付いた人間がいる。そして罪を犯した妖がいる。どちらも窮地にあり、どちらもお前が手を伸ばせば救える。だが、片方しか救えぬ。お前はどちらを救う?」


怪我した人と悪さをした妖、どっちもピンチでどっちしか助けられない。

んなの考えるまでもないだろ、と開きかけた口を後ろから塞いだのは鶴吉だった。


「待て待て待て、そんな運転免許の学科試験みたいな質問にほいほいと答えるな」

「これだから単細胞ゴリラは」


やれやれと首を振る亀世。

ゴリラは多細胞生物だよ、と不貞腐れながら答える。理科は初等部のころから得意なほうだった。

亀世が腕を組んで顎に手を当てる。


「普通の人間なら即答で"人間"と答えるんだろうな。これが恐らく"本音"だ。だからと言って、"妖"と答えれば"建前"になる。恐らくこれは答えではなく、その答えに至った理由を聞きたいんだろう」


ちらりと文車妖妃を見上げる。

赤い唇をにぃと引っ張りこちらを見下ろす。泰紀は両腕をさすってぶるりと震えた。