夜更けまで作戦会議を続け、明日の行動を共有したところで解散となった。
洗面所で歯磨きをして部屋に戻るために濡れ縁を歩いていると、仰向けになって腕枕をして月を見上げている慶賀くんの姿があった。
「慶賀くん? そんなとこで寝たら風邪ひくよ」
春先とはいえまだ夜は冷え込む。声をかければ「ん?」と顔を上げた。
「巫寿か。ダイジョーブ、もう少ししたら部屋に戻るから」
ニッと笑ってブイサインを見せと、またゴロンと横になる。少し赤くなった目元と潤んだ瞳を無視することもできず、静かに隣に腰を下ろした。
ちらりとこちらに目を向けた慶賀くんは少し恥ずかしそうに鼻を啜って「あんがと」と笑った。
風が木々を柔らかく揺らす音だけが響く。月は低い位置で淡い光を滲ませながら夜空を照らしていた。
「静かな夜だな。月も綺麗で、穏やかな空気が流れてる。平和で、この世のどこにも悲しいことなんて起きてないみたいだ」
風に吹かれてゆっくりと月の前を通り過ぎていく雲を眺めながら「そうだね」と頷いた。
「ずっとこうだったらいいのに。皆とさ、馬鹿みたいに騒いで笑って飯食って寝て。明日も明後日も、五年後も十年後も、こんな毎日が続いたらいいのに」
穏やかでいて、揺らぎのない横顔。まるで自分のやるべきことが見つかったかのように揺るがない決意が垣間見える。
「そのためにも、俺らが皆を守らなきゃいけない。なのにあいつは────」



