言祝ぎの子 結 ー国立神役修詞高等学校ー



「うちの泰紀で良ければ、好きにしちゃってくださ〜い」

「慈悲があるなら、せめて一息で食ってやってくれ」


熨斗をつけて差し出さん勢いでドーゾドーゾと肯定的な双子に泰紀が「それでも俺の先輩かよ!?」と瞳を潤ませる。

泰紀の馬鹿力をもってしても体を縛る文車妖妃の巻物を引きちぎることはできず、尖った唇がどんどん迫ってくる。

文字のごとく目と鼻の先まで迫ってきた。

泰紀はギュッと目を瞑る。


「恵理ぃぃぃ!」


口をついて出たのは愛おしい恋人の名前だった。

ひいい、と歯を食いしばって仰け反る。しかし覚悟していた生暖かい温もりと感触は一向に訪れず、恐る恐る片目を開ける。

不貞腐れた顔で面白くなさそうに息を吐いた文車妖妃の顔があった。


「口付けの直前に別の女の名前を呼ぶなど……興が冷めたわ」


体を縛り付けていた巻物がしゅるんと離れて、体は床の上に叩き付けられる。激しく打ち付けた尻を撫でながら、文車妖妃を見上げた。


「こんなつまらん男、妾の趣味ではないわ。試練を受けさせてやるから、さっさと用を済ませて立ち去れ」


フンと鼻を鳴らした文車妖妃は、近い棚の上へふわりと登ると胡座をかいて三人を見下ろした。


「よかったな泰紀。お前の貞操は守られたぞ」


ははは、と笑いながら泰紀の背中を叩く双子。


「……俺、ぜってぇあんたらのこと許さねぇからな」

「おお怖い怖い」


ニヤニヤ笑う双子に地団駄を踏んだ。

この双子には人の心というものがないのか。