「く、口付けってあれだろ!? チューだろ!? 接吻だろ!?」
「泰紀お前、よく接吻なんて単語知ってたな」
「今はそんな話してねぇよッ!」
文車妖妃の巻物から逃れようとジタバタと暴れるも髪の毛一本すら通さないほどぴったりと身体に張り付いている。
これまではなんとも思わなかったそれも急に気持ち悪くなってきた。
文車妖妃の赤い唇がにやぁと弧を描く。
「お前、よく見ると中々いい男じゃないか。妾も久しく人間の男を味わっておらん。お前の唇を差し出せ」
捕食者の目の奥に、ブルブルと怯える泰紀が映った。
「なんで俺の唇と引き替えなんだよ、ふざけんな!」
ダハハハッと腹を抱えて笑い転げる鶴吉が、自分の太ももをばしばしと叩きながら目尻の涙を拭った。
「いいじゃねぇか、チューのひとつやふたつ! 減るもんじゃねぇし」
「減るわ! 確実に大切な何かが減るわ!!」
「お前彼女いるんだろ? ファーストキスでもあるまいし」
鶴吉のからかう言葉に俯いて黙り込んだ泰紀。顔は真っ赤でブルブルと震えている。
「うそだろ!? お前まだ彼女とチューしてないの!?」
鶴吉があひゃひゃひゃ、と身体をくねらせる。
「お前本当に健全な男子高校生か? ナニとは言わないが、元気になる薬処方してやろうか?」
亀世が意地悪い笑みを浮かべて泰紀を見上げた。下腹部に視線を向けられ、思わずキュッと足を閉じる。
「うるせぇ鶴亀ッ!」
熟れたトマトのように首から額まで真っ赤に染った泰紀が吠えた。



