「管理はお前の役割なんだろ。何とかならないのか」
「ふむ……そうだな。確かに妾が許せば入ることも閲覧することもできる。しかしそれが役人どもにバレれば、妾もタダではすまぬ。妾が危険を犯してまでお前たちを手伝う利点があるか?」
泰紀はなぜか背筋が凍るような悪寒がしてぶるりと震えた。文車妖妃の視線が自分の体にまとわりつく。まるで目の前の餌を狙う蛇のようだ。
「つまり……試練を受けたければ何か差し出せ、ということか?」
「話が早いのう」
くくくっと喉の奥で笑った文車妖妃が巻物で縛った泰紀を持ち上げた。突如宙に浮いた泰紀は「うお!?」と悲鳴をあげる。
自分の隣まで泰紀を持ち上げると、着物の袖から毛深い腕を伸ばし泰紀の頬を撫でる。完全に捕食者の目だった。
全身が粟立つ感覚に「ヒュッ」と喉の奥を鳴らした。
「お前、妾と口付けしろ」
真っ赤な唇が弧を描く。
泰紀はぽかんと口を開けて目を瞬かせた。
オマエ、ワラワトクチヅケシロ。ワラワトクチヅケシロ。妾と、口付けしろ。口付け────。
「妾と口付けしろぉぉぉおお!?」
泰紀の悲鳴と双子が盛大に吹き出す音が揃った。



