「侵入者ども、この神聖な書庫に何用だ? なぜ身分を偽って中へ入ってきた。嘘偽りない神職ならば、正規の手続きを踏めば良かろう」
目の奥が鋭くギラリと光った。臆することなく亀世が顎を上げて鼻を鳴らす。
「正規の手続きを踏んだら見れない資料を見たいんだよ。本庁の役人たちが必死こいて隠している資料だ」
「ふむ……空亡戦の報告書か」
少し驚いた顔をした亀世は「話が早いな」と不敵に笑った。
「神母坂禄輪が提出した空亡戦の報告書が見たい。だから通してくれ」
「ならぬ」
間髪入れずに答えた文車妖妃は、袖から扇子を取り出してシャッと広げた。口元を隠し目を細めて亀世たちをジッと見つめた後、また泰紀に視線を送る。
「ここは決められた者しか入れぬ書庫、そしてお前たちが求めるそれは禁書庫に保管されるものだ。通すわけがなかろう」
「試練は二つとも合格したぞ」
「最後の試練は合格しておらん」
最後の試練?と泰紀が首を捻る。文車妖妃が伏せ目がちに泰紀へ視線を送った。
「左様。最後の試練は、妾が出す三つの問答に一つも間違わずに答えること。だが……お前たちは神職ではなく神修の学生だな? もともと本庁の決まりで、学生はこの書庫への立ち入りを禁じられているはずだ。試練を突破したことは認めるが、やはりお前たちがここへ立ち入ることは許されぬ」
泰紀はまた文車妖妃と目が合った。
やたら目が合うなこのオッサ……お姉さん。



