テーブルがその負荷に耐えられる訳もなく、踏み潰され木っ端微塵となった木片の上に片膝を立てて蹲るのは、おそらく女だった。
濡鴉の美しい長髪に十二単らしき鮮やかな着物をまとっている。
三人がすぐにそれを女だと断定しなかったのは、それが鍛え抜かれたような立派な肩を持っていたからだ。
それがゆっくりと顔をあげる。
「ヒッ」
「うおっ」
「なるほど」
男二人は悲鳴をあげて抱き合い、亀世は面白いものでも見たかのようにメガネを押し上げて笑う。
平安時代の女性貴族のようなまろ眉に黒く塗りつぶされたお歯黒。輪郭は角張っており顎はふたつに割れている。おしろいの下からは剃り残しなのか生え始めなのか、うっすらと青髭が見えている。
十二単から伸びているのは手足ではなく、ベビのようにしゅるしゅると動く垂らした巻物だった。間違いなく妖だ。
「お、男? 男だよな鶴吉さん?」
「いや……女……男……おん、男? お前どう思う亀世」
「見た目で性別を決めるのは良くないぞ」
ごもっともだが、今はそういう話じゃない。
ふむ、と顎に手を当ててその妖をしげしげと眺めた亀世。
「文車妖妃だな」
「いかにも。妾はこの書庫を管理し守る者」
奥二重の目を細めて顎を上げた文車妖妃。
今あいつ妾って言ったぞ。やっぱり女じゃね? いやあの見た目どう見てもオッサンだろ男だよ。つーか文車妖妃って女の妖じゃなかったか?
亀世の後ろで肩を寄せあってこそこそと話す男二人に文車妖妃は眉を釣り上げた。
垂れ下げた巻物を自在に操り、泰紀と鶴吉の体に巻き付け締め上げる。ぐぇッと悲鳴をあげた。文車妖妃はそんな泰紀に視線を送りにやりと笑う。



