クソ、と頬の汗を拭ったその時。
「神職としての力量────有り」
形代が唐突にそんな言葉を発したかと思えば、ポンッと空気を鳴らして白煙を上げた。白煙の奥で床の上に何かがカランと落ちる金属音が聞こえた。
白煙を手で仰ぎながら床に目をこらす。
飴色の床板の上に、トンボのように細い錆びた鍵が転がっていた。腰を屈めて拾い上げると、何故か手によく馴染む。
「鍵……?」
「でかした泰紀ッ!」
バシンと勢いよく叩かれたかと思ったら誰かが背中に飛びついた。うお!?と悲鳴をあげた泰紀はたたらを踏んでなんとか耐える。
「偉いぞ、よくやった!」
破顔した鶴吉に犬を撫でる用にワッシャワッシャと頭を撫でられ、「やめろォ!」と悲鳴をあげる。
「なるほどな。神職として鎮魂、祓除、清祓が正しく行える力量があるかを試していたのか」
亀世が顎をさすりながら歩み寄ってくる。亀世が鍵を指さす。
「合格だってさ」
「え、俺、合格したのか?」
「そう言ってるだろ」
泰紀の手から鍵を引ったくった亀世は天にかざして見聞する。そして「本物だな」と満足げに笑うと、スタスタと扉へ向かって歩き出す。
泰紀はへなへなとその場に座り込んだ。
「あっ、ちょっと待てって亀世。泰紀に休ませてやれよ」
「時間がない。あと二十分かそこらで私の漢方薬の効果が切れるんだぞ」
「ったくお前は……」



