言祝ぎの子 結 ー国立神役修詞高等学校ー



「掛けまくも畏き 天地開闢(あめつちかいびゃく)の始めの時より 生れ坐します 皇親(すめみおや)神漏岐(かむろぎ) 神漏美(かむろみ)の命 大八洲国(おおやしまくみ)を生み成し 神生み成し給ひて 火産霊神(ほむすびのかみ)を生み給ひし時 伊弉冉大神(いざなみのおおみかみ) 神避(かむさ)り坐しき」


まずは鎮魂。対象の荒ぶる御霊を沈め、次の祓除に繋げる。


「ここに 鎮魂(たましずめ)の神事を(つか)へ奉りて 荒ぶる(たま)をば(なこ)め 和魂(にぎみたま)をば正しき御座(みくら)に鎮め 幸魂(さきみたま)奇魂(くしみたま)を振り起こし 清く明き心を以て 日々の御業(みわざ)を成さしめ給へと 恐み恐みも白さく……!」


必死に祝詞の縛りから抜け出そうともがいていた形代がピタリと動きを止めた。静かな瞳で何かを試すように泰紀をじっと見つめている。

大きく深呼吸をして呼吸を整えたあと、もう一度胸の前で柏手を打った。

祓除のラスト、穢れを祓う清祓詞(きよはらえことば)


「掛けまくも畏き 伊邪那岐大神 筑紫の日向の橘の小戸の阿波岐原に 禊祓へ給ひし時に 生れ坐せる 祓戸の大神等 諸々の禍事罪穢を 祓へ給ひ清め給ふことを白す────!」


どこからともなく強い風が生じた。泰紀の袴の裾をバタバタとはためかせて室内を駆け抜けた風は、真ん中に佇む形代を中心に小さな竜巻を作る。形代の周りを漂っていた暗紫色の靄が、霧が晴れるかのように吹き飛んだ。

風が止んだ。室内は沈黙に包まれる。形代は何も言わず、動かず、ただ真っ直ぐと泰紀を見つめている。

心臓がどくどくと音を立てた。こめかみを汗が伝う。


ミスったか? やっぱり形代に何らかの物理攻撃を当てなければ意味がなかったのか? だとしたらこの次はどうする?