志ようさんがいない今、空亡に手が届くのは私だけ。だから仲間や家族を守るべく、学び舎を飛び出して空亡を滅ぼすための方法を模索している。
問題はもうひとつ残っている。芽さんのことだ。
彼は空亡戦で恩師と親友、そして母のように慕っていた志ようさんを亡くしている。大切な人を戦線に送り込み、志ようさん一人に重荷を背負わせた本庁や神修の関係者へ復讐し壊滅させるために「終わり」を司る三種の神器を探している。
撞賢木厳之御魂天疎向津媛命の御神刀である國舘剣、斎常舞比売命の巫女鈴である御覇李鈴、そしてふくらの社が保管しているとされる御神筆・払日揮毫筆だ。
國舘剣は今私たちの手元にあり、残り二つは行方がわかっていない。
「絶対に、神々廻芽より先に三種の神器を見つけないと」
慶賀くんの小さな呟き、けれど力強く揺るがない声だ。恵衣くん以外のみんなは深く頷き力強い目で互いの顔を見る。
「当たり前だ馬鹿。何のためにこんなことしてると思ってんだよ」
お互いに決意を確かめ合う感動的な空気が流れる中、恵衣くんの冷めた声が水を差す。
おおい!と大袈裟にずっこけた素振りを見せた慶賀くんは、淡々とタブレットを操る恵衣くんの首に腕をかけて「そこはお前も乗っかれよ!」とヘッドロックを決める。
いつの間に稽古したのか見事な体捌きで慶賀くんを床に叩きつける恵衣くん。
異文化理解学習で鞍馬の神修へ行った時は、向こうの先生に簡単にねじ伏せられていたのに、いつ苦手を克服したんだろう。
重苦しい空気が流れていた居間に私たち笑い声が響いた。



