じり、と横にずれる足並みが揃った次の瞬間、形代が拳を突き上げて突っ込んできた。初手は物理攻撃、さっきまで自分が考えていた戦法なのも不気味を超えて腹が立つ。
初手の攻撃は重い。受けずに腕で横に払い落とした。骨にジンと重みが走る。自分の攻撃はこんなに重かったのか。
形代の体勢が崩れたのがわかった。その瞬間胸の前で二回柏手を打つ。
「恐み恐みも白さく 火産霊大神の御火の御力を以て 祓ひ清め給へ!」
奏上と同時に、何もない空気中にバチッと火花が爆ぜた。火花は空気中の酸素を燃やしてバスケットホール程の大きさに膨らむと尾を引いて形代へ進んだ。
「祓へ給ひ清め給へ 守り幸へ給へ」
形代が素早く略拝詞を奏上し、火球は触れる前に卵色をした結界にあたって弾け散った。
防がれるのは百も承知だ。これくらいの攻撃なら自分は簡単に防げる。
「恐み恐みも白さく 火産霊大神の御火の御力を以て 祓ひ清め給へッ!」
さっきよりも声を太くした。大きめの火球が形代を追いかける。
次も防いでやるよ、とでも言いたげなように口角を上げた形代はまた手を合わせて素早く祝詞を唱える。
その視線は目の前の火球にしか向いていない。
形代の背後で、バチッと小さな火花が爆ぜる。
「前からの攻撃ばっかりだと思うなよッ!」
ニヤリと笑った次の瞬間、「泰紀後ろだッ!」と鶴吉の叫び声がしてハッと振り返る。風の塊が鎌のような形に固まって鼻先まで迫っていた。



