道場の真ん中の方から「ぐはっ」と鶴吉の呻き声が聞こえて目をやると、大の字になって伸びている姿があった。決着が着いたらしい。
片方の鶴吉がパンッと弾けて紙切れになる。負けたのはリアル鶴吉のようだ。
「泰紀、回収してこい」
「うっす」
命じられて小走りで駆け寄り顔を覗く。意識はあるようで「いでで」と顔を顰めて呻いている。
「大丈夫か?」
「あとは、頼んだ。俺のことはいいから、先に行け……」
「それ死亡フラグだぞ。あと負けてんだから進むもなんもねぇよ」
ため息をついて鶴吉に肩を貸す。亀代の隣にドサリと落として振り返る。テーブルの前まで歩み寄り、形代を手に取った。
次は俺の番か。
筆を手に取って名前を書きながら、初手のことを考える。
相手は己。いつもの自分なら先手必勝と飛び出すけれど、相手が自分なら向こうも飛び出してくるはずだ。それを見越して防御に出るか、同じく飛び出して鍔迫り合いになるか。
名前を書いた形代を持って道場の中心に立つ。オーディエンスから「負けたら許さんぞ」「負けたらもれなく罰則だぞ〜」という脅迫まがいの声援が届く。勘弁してくれ。
ひと呼吸おいてフッと息を吹きかける。
ぼわりと白煙が上がって、目の前にほくろの位置まで全く同じ姿の己が現れた。
鏡でも見ているようだ。試合が始まる前の高揚した顔までコピーされていてもはや不気味だ。



