「今回は鶴吉と泰紀に一つ目の試練を任せて、私は二つ目の試練のために体力を温存しておく算段だったんだがな。しくじった」
「だから俺らに丸投げしたのか? なんだよ、作戦だったのか」
「作戦以外に何があるんだよ。私はそこまで薄情じゃないぞ」
どこがだよ、とは言わずに秘めた。
パァンッと目の前で火花が弾けた。鶴吉の試練が始まったらしい。足の裏に激しい振動が伝わってくる。自分に順番が回ってくることに備えて、鶴吉の試練を観察することにした。
形代で何らかの動物を出す時、その動物の形を作ることは容易でも目鼻や色味を出すことはとても難しく、二級上以上の神職ですらできない人は多い。
ましてや今回の形代のように自分と全く同じ姿形の形代を作り出し、それに加えて挑戦者の能力を完全にコピーしている。おそらくこのトラップを作ったのは特級クラスの神職だろう。
泰紀は「きちぃな、これ」と眉を寄せた。
以前槍術部で練習試合をした時のことを思い出した。
専科を卒業した五個上の先輩で、泰紀とは体格がほぼ同じで実力も互角、癖や戦い方が似ていてとてもやりにくい相手だった。結局は最後まで決着がつかず、じわじわと体力を削られるだけの試合になった。
つまりこの試練は、その時と同じ状況だ。
あの時は自分に似た相手だったが、今回は自分が相手。
癖や思考が同じなら、基本的にはどう攻撃しても防ぐか弾かれる。
そんな相手とどう戦えばいいのか。



