言祝ぎの子 結 ー国立神役修詞高等学校ー


同じように廊下が続くのかと思っていたけれど、扉の先は道場のような広々とした空間だった。入ってすぐにテーブルがあって、墨が入った硯に筆、黒いお盆には人型に切り抜かれた暗紫の靄を纏った形代がある。

形代の真ん中には鍵のようなマークが朱色で描かれていた。


「どうする? 亀代。一斉に挑むか?」

「いや、一人ずつだ。私から行く。お前らはちょっとの間休んでろ」


双子の中だけで答えを出すと、亀代はテーブルの前まで進み筆に墨を含ませた。そのまま形代の真ん中に「飛鳥馬亀代」と名前を記した。


「何するんだ?」

「いいから見てろって」


鶴吉が泰紀の肩を引いて道場の壁まで下がらせる。

ちらりとこちらを一瞥して十分に離れたのを確認した亀代は、形代を手に持つと「フッ」と息を吹き替える。

その瞬間、手に持っていた形代こらぼわりと白煙が上がった。


「な、なんだ!?」

「二つ目の試練は"徳衡(とっこう)の座"だ。神職としての力量が試される」


今度は鶴吉が傍観スタイルで壁にもたれ掛かる。

白煙が次第に晴れていき、その真ん中から見慣れた姿が現れた。

白い着物に緑の袴、長い黒髪を高い位置でひとつにゆった眼鏡をかけた女性。


「えッ!? 亀代さんが二人!?」

「んな訳あるか。奥にいるのは亀代の形代だ。ここでは自分の姿の形代と戦うんだよ」


自分の姿の形代と戦う?