言祝ぎの子 結 ー国立神役修詞高等学校ー


夕食を終えて食器を片付けた私たちは、今度は円卓に書き込まれた地図や書類を広げる。再び円卓を囲って身を乗り出すと、各々に書類やタブレットを覗き込んだ。


「そっちどうだ」

「てんでダメ。やっぱりロープかなんかを腰に巻いて誰かが入ってみるしかないんじゃない?」

「やっぱり結局そうなるのかなぁ」


対面に座る3人の重いため息が重なる。

この調査を始めてひと月近く経ったけれど、芳しい成果は挙げられていない。

やはり私たち学生だけでは何をするにしても限界があるのだろうか。


「巫寿ちゃんこれ前に読んでたよね。どうだった?」


先日私が目を通した書物を指さした来光くん。力なく首を振れば、来光くんは少し疲れたような顔をして「了解」とひとつ頷き積まれた本のタワーの一番上に重ねた。

私たちは今、二つのグループに別れて動いている。私と来光くんのペアで空亡を倒すための方法を、残りの恵衣くんたち三人は三種の神器の行方について調べている。

聖仁さんの神葬祭(そうぎ)があった日、私は過去を見ることが出来る授力(じゅりょく)をもつ巫女さまに、私が忘れてしまっている過去について見てもらった。

そこには本庁や仲間の神職を裏切る前の神々廻芽(ししべめぐむ)の姿があり、私と芽さんはそこである重大な事実を聞いていた。

『大妖怪・空亡(くうぼう)を滅ぼすには、前・審神者(さにわ)か私が相打ちとなってとどめを刺すしか方法はない』

前審神者である志ようさんが、未来を見る授力・先見の明を使って見た未来だ。