「あはは、たしかに泰紀も違いを分かってなさそうだね」
「確かに。泰紀のことだから食えりゃどっちも一緒だろとかいいそう」
笑い合う嘉正くんたち。笑い声は円卓を強く叩きつける音でぴたりと止んだ。ハッと皆が視線を向ける。
テーブルの上に叩きつけられた慶賀くんの握りこぶしが震えていた。
「────あいつの話は、すんな」
俯いていて表情は分からない。けれどその声は確実に怒りで染まっていて、それなのにどこか迷うように揺れていた。
私たちは顔を見合わせる。
来光くんは眉を下げて表情を曇らせる。私たちの中で来光くんが、一番二人と仲が良かった。
今の状況に人一倍悩んでいるのは、来光くんだろう。
しーんと静まり返った居間に、スプーンと食器が擦れる音が響く。
怖い顔をしてハヤシライスを頬張る慶賀くんの横顔を見つめながら、この場にいない泰紀くんのことを思い、喉につっかえた米を水で流し込んだ。



