ほとんどの学生が終業祭のあと直ぐに帰省するのもあって、翌日の寮内は耳鳴りがしそうなほどに静まり返っていた。
学生服だと目立つため、比較的スーツっぽく見える濃紺のスラックスとシャツの私服姿に着替え、首から木札を下げてポケットにスマホをねじ込んだ。
時計を見上げる。朝の十時を少し過ぎた頃だ。
本殿では専科生の卒業式が始まった頃だろう。本庁の職員のほとんどが出席しているので、今頃庁舎は手薄になっているはずだ。
正面玄関は常時受付係がいる。まずは裏口の職員専用出入り口を目指す。通行札は持っているから難なく入れるだろう。
ずっとこの時を待っていた。
「……ッシャ!」
両頬を勢いよく叩いた泰紀は勢いよく自室の扉を開けて飛び出す。
意気揚々と一歩目を踏み出したその時。
「よう泰紀、そんなに気合い入れてどこ行くんだ?」
「何か企んでるようだな?」
突然背後から両脇を掴まれて、耳元でそんな囁きが聞こえた。うわぁッ!?と叫ぶ寸前で口を抑えられ、自室に押し戻される。
四本の手を引き剥がした泰紀は勢いよく振り返って2人を睨んだ。
「────ッ、いきなり何すんだよ! 亀代さん、鶴吉さんッ!」
悪びれた様子もなく部屋の中に上がった二人は「汚ぇ部屋だな」と畳の上に胡座をかいた。



