言祝ぎの子 結 ー国立神役修詞高等学校ー




三月下旬、神修は間もなく旅立つ卒業生たちのために満開の桃の花を咲かせていた。

教壇に立つ薫の話を聞き流しながら窓の外をじっと見つめていた泰紀は、昨日から妙な胸騒ぎを感じていた。

何が悪い予感がするような妙なざわつきだった。明日のことを考えて緊張しているのか、それとも別の何かか。


「はい、じゃあホームルームは終わりね。春休みの宿題ちゃんとやってくるんだよ、泰紀」


名前を呼ばれてハッと顔をあげる。その時、下校時刻を知らせる鐘が鳴り響いて、勢いよく立ち上がった。同時に机の横に掛けていた鞄を肩にかけ、脱兎の如く教室を飛び出す。


「ちょっと待てちょっと待て」


襟首を掴まれる感覚がして振り返ると、薫の形代が己を捕まえていた。


「薫先生、俺いちばん早い車で帰りたいんだよ! 離してくれよ!」

「その前にひとつ聞きたいことがあるの。すぐ解放してあげるから」


唇を尖らせた泰紀が勢いよく形代の手を振り払って、歩いてくる薫を「なんだよ?」と見上げる。


「巫寿たちから、連絡あった?」


ここ数週間、何度も何度も色んな大人たちから尋ねられた質問だった。

クラスメイトの五人が黙って神修を立ち去った。

どこへ行ったのか、何が目的なのか。幾度となく尋ねられたが「知らない」の一点張りで通している。

実際に彼らがどこにいるのかは把握していないし、最終目的は知っていても今何をしているのかは全くもって分からないので嘘はついていないはずだ。


「ない」


泰紀がそう即答すると、困ったように首をさすった薫がため息をこぼす。

連絡だって一度たりとも届いていない。これも嘘じゃない。