「ああ、しぬの、こわいな。どうなるんだろ、さみしいな」
「慶賀は死なない! 言祝ぎを口にしろッ!」
恵衣くんが名前を呼ぶ。慶賀くんのことを名前で呼んでいるのは初めて聞いた気がした。
どんどん力が抜けていく。唇は白く頬も土色だ。目からは力が抜けていき、光がどんどん小さくなっていく。
「さみしくは、ないか。あのしゃしん、もってるし」
帆負命の家でみんなで撮った写真のことを言っているのだろう。慌ててリュックを探った。前ポケットにコピー紙にくるんで大切にしまってあった。
冷たいその手に握らせる。慶賀くんは嬉しそうに頬を緩めた。
「ちょっと、さきいくな。おまえらは、もうちょっと、ゆっくりこいよ」
「馬鹿なこと言うなよ! 慶賀は僕らとおじいちゃんになるまで馬鹿やって笑うんだよ! それで巫女頭に叱られて、罰則食らうんだろ!」
「はは……それ、ちょっと、いやかも」
自然と皆の祝詞奏上の声が止まっていく。嫌でも気付いてしまった。もう、これ以上は手の施しようがないんだ。
私の手に恵衣くんが手を重ねた。反対の手を来光くんが握りしめる。嘉正くんが背中から慶賀くんを抱きしめた。
慶賀くんの苦しげな息遣いと、私たちの鼻をすする音だけが響いている。



