言祝ぎの子 結 ー国立神役修詞高等学校ー


ゴホッ、と苦しげに咳き込む慶賀くんにハッと我に返った。慌てて抱え直すと、口の周りは鮮血で真っ赤に汚れている。私たちを見上げる目は虚ろで、瞳は涙の幕が張って大粒の雫がこぼれ落ちる。


「み、んな。ごめ……ッ、俺、もう、はしれない」


息絶え絶えにそう伝える慶賀くんに心臓が凍りつく感覚がした。

何かを探し求めるように伸ばされた手を掴んだ。氷のように冷たい。必死に両手で温める。温めても温めても、どんどん冷たくなっていく。

あの時だ、鳥居を通る前だ。風を切る音がしたのは、ぬらりひょんが念動で包丁を投げた音だったんだ。


「何やってんだよ慶賀! なんだよこれ、ふざけんなよ!」


来光くんが顔をぐしゃぐしゃにして膝を折った。


「掛けまくも畏き 八百万の神等の前に 恐み恐みも白さく ここに在す志々尾慶賀が身に 不慮の障りによりて負ひし 傷と痛みと穢れとを 速やかに祓ひ清め 元の健やかなる姿に 立ち還らしめ給ひ……ッ」


恵衣くんが青白い顔で早口に祝詞を奏上する。平癒祝詞だ。慌てて私もあとを追いかけるようにして祝詞を唱える。

祈るように血だらけの手を額に当てた。


「ごめ、これ、もう……ダメなやつ、たぶん」


ごふ、と血の混じった唾を吐き出した慶賀くんが息絶え絶えにそう言う。誰もその言葉に耳を貸さなかった。必死に平癒祝詞を唱え続ける。終わればすぐ頭から、何度も何度も繰り返し、声がかすれても唱え続ける。


「なんで、なんで血止まらないんだよぉ……ッ!」