言祝ぎの子 結 ー国立神役修詞高等学校ー


「またカレーかよ! お前らが当番の日、ほぼカレーじゃん!」

「今日はハヤシライスだよ! カレーとハヤシライスの違いを勉強してから文句言え!」


ハヤシライスのお鍋を運んできた来光(らいこう)くんに睨まれて、慶賀くんは唇をとがらせた。続々と食器や炊飯器が運び込まれてきて、食卓が整えられる。私たち5人は円卓を囲んだ。


「はい巫寿」


盛り付けられたお皿を礼を言いながら受け取る。


「こっちは慶賀、これは来光。恵衣のぶんね」


全員に皿が行き渡ると静かに手を合わせた。いただきます、の声が揃う。

大口で頬張った慶賀くんが「ハヤシはハヤシで悪くねぇな」と零す。来光くんは得意気に鼻を鳴らした。


「にしても17にもなってハヤシとカレーの違いが分からない人がいるとは」


嘉正(かしょう)くんがくくくと喉の奥で笑う。


「そ、そのくらいの違い分かるし!」

「慶賀ってキャベツとレタスも見分けられなさそうだよね」

「はぁ!? そんなん常識だろ! キャベツはシャキシャキしてる方だ!」

「どっちもシャキシャキだけどね」


冷静な突っ込みにぷッと吹き出す。

この家へ移ってからは、もっぱら誰かが慶賀くんをからかうことで笑いが生まれていた。


「うるせぇー! 絶対俺以外にも分かんねぇやついるだろ!」


顔を赤くした慶賀くんがスプーンを突き出してみんなの顔を見回す。