リュックに入れていた予備の迎門の面を被って鬼門に飛び込んだ。直ぐに宿場町へ出る。時刻は丑三つ時、店のあちこちにあかりが灯り沢山の妖たちで賑わっていた。
「こっちだ!」
先頭を進む恵衣くんが表通りから一本逸れた路地に飛び込んだ。一気にあたりは静かになって、賑やかな表通りの声も遠くなる。複雑に入り組んだ裏道を何度も何度も曲がる。
「恵衣、これからどうする?」
「八瀬童子の里に行く。一晩だけ匿ってもらおう」
「今の状況じゃそれが一番だね。みんな、もう少しだけ頑張ろう」
嘉正くんの励ましの声に、息を詰まらせながら頷く。八瀬童子の里ならここから一時間とかからない。事情を話せばきっと匿ってくれるはずだ。
よし、と気合いを入れ直して走り出したその時。
「────皆、ごめん」
突然そんな声が聞こえて「え?」と振り返った。一緒に走っていたと思っていた慶賀くんが随分後ろの方で足を止めている。
「慶賀? 何してるんだよ、早く来なよ!」
来光くんがそう声をかけるも、慶賀くんは俯いたまま顔を上げない。
どうも様子がおかしい。
「慶賀? どうした?」
嘉正くんが数歩歩み寄ったその時、膝から崩れ落ちた慶賀くんはそのまま地面の上にドサリと倒れ込む。
ばくん、と心臓が大きくはねた。
「慶賀!?」
勢いよく駆け寄って、慶賀くんを取り囲む。倒れた慶賀くんを嘉正くんが抱き起こした。
「……は?」
戸惑うように嘉正くんが声を上げた。慶賀くんを抱いていた片方の手をゆっくりと顔まで持ち上げる。月明かりに照らされた右手は、手首まで真っ赤に染まっていた。
目を見開いた嘉正くんが震える手で慶賀くんを前かがみにさせた。白衣の背中は真っ赤に染まっていて、その真ん中には包丁が突き刺さっている。
「な、んだよ。これ」



