ほほほ、とぬらりひょんが愉快そうに笑った。
「幽世で、お嬢さんの首に懸賞金がかけられているんじゃよ。情報を提供した者にもそれなりの謝礼がでる。日陰者たちはこぞってお前たちを探しておるわ」
私の首に、懸賞金が?
そこでハッと息を飲んだ。鬼脈で迷子になる前のことだ。妖に声をかけられて襲われそうになった。あれはそういう事だったんだ。
額に脂汗が滲む。じりじりと後ずされば、みんなの背中がトンと当たった。
私たちにしか聞こえない声で「十」と呟いたのは嘉正くんだ。バレないように小さく首を引く。
私達は神修を発つ前にいくつかルールを決めていた。そのひとつに、もしも今後敵に出くわした時どうするか、という話があった。
『もしも敵に出くわしたら、戦わずに逃げよう』
そう提案したのは嘉正くんだった。
『命あってこそだ。無駄な戦いは避けて、自分たちは最終決戦に向けて力と戦力を温存する。逃げることは恥ずべきことじゃない。でしょ?』
『だな! 俺ら長年巫女頭から逃げ回ってきたから、逃げ足だけは自信あるし!』
『誇れることなのそれ? まぁ嘉正の意見には賛成だよ』
私達は戦わない。まずは逃げること、自分たちを守ることに全力を注ぐ。
心の中で十を数える。
できる限り深く息を吐き呼吸を整え、両足に力を込めた。



