「アレを盗られるとヤベぇんだろ!?」
最後尾を走っていた慶賀くんがそう叫ぶ。
「蔵にあるから安全だ、いいから走れ!」
「でも……やっぱ俺、取りに行ってくる!」
先行ってて!とだけ言って廊下をもどり始めた慶賀くんに皆が足を止めた。
行くな戻れというみんなの叫びは届かず走っていってしまう。
「あのバカ! 人の話を聞けよッ!」
悪態を吐いた恵衣くんが足を止めた。ばくんばくんと心臓が徐々に大きくなっていく。
駄目だ、これじゃ私が見た未来と同じになる。
「あのバカを連れ戻す!」
「恵衣! 行くなら全員でだ!」
すかさず噛み付くようにそう答えた嘉正くん。苦虫を噛み潰したような顔をした恵衣くんが「行くぞ!」と私たちに怒鳴った。
まだ焦げ臭い匂いは感じない。伊也たちは来ていない。もしかしたらあの襲撃は今日じゃなかったのかもしれない。そんな淡い期待を胸に抱く。
ドタバタと廊下を駆け抜ける。蔵へ行くには台所の勝手口を通っていく方が早い。
恵衣くんが勝手口の扉に手をかけたその時。
目の前の扉が青白い炎に包み込まれた。ぼわりと熱風が吹き付けて私達は足を踏ん張る。
「恵衣ッ!」
「問題ない、下がれ!」
瞬時に手を引いたのか、炎に当たることはなかったらしい。
恵衣くんの怒号に私達は飛ぶように後ろへ下がった。燃え盛る扉が弾けるように外へ吹き飛ぶ。



