知っている。あの二人を私は知っている。
『おい! さっさと走れ死にたいのか!』
『慶賀はどこいった!?』
『さっきまで一緒にいただろ!?』
必死に辺りを見回す。慶賀くんの姿だけどこにもない。
『死ねぇッ!』
女が手の平に出した狐火を投げつけた。すんでのところで略拝詞が間に合って、青い火花を散らして消え散る。
その時、身体と意識の繋がりが途切れ始める感覚がした。意識の中の私よりも、私自身の声が大きくなる。
このことを、今すぐ皆に伝えないと────!
「ハッ……!」
勢いよく顔を上げた。青白い顔が鏡に映る。額には汗が滲んでおり前髪がベッタリと張り付いていた。
両手が痺れて震えている。もつれそうになる足を必死に動かし廊下を駆け抜けた。



