翌週の月曜日。
教室でプリントの配布があり、委員として手伝っていた。
「志摩、おまえ字きれいだよな〜。そんで真面目。絶対いい彼氏になるタイプ」
クラスの男子・加藤が、肩を組んできた。
「やめろよ……!」
「じゃあ彼氏つくれよ〜。なぁ、ゆうと?」
「っ……! や、やめろっつって!」
「いいじゃん、名前呼び!」
「恥ずかしいから!」
周りは笑い、加藤はノリノリで俺の肩を揺らす。
まぁ、いつもの軽い悪ノリだ……と思っていた。
――ふと。
廊下の方に視線を向けた。
湊がいた。
プリントを手にしたまま立ち止まり、表情が固まっている。
そのまま、すっと視線を落とし、踵を返した。
「……湊?」
呼んだけれど、声は届かなかった。
◇
文化祭の作業中も、湊はそっけなかった。
会話の返しが短い。
敬語が戻っている。
「湊、これ貼るの手伝って」
「あ、はい。……貼りました」
「ありがと。じゃあ次――」
「俺、後ろの作業やってます」
「え、ちょっと……」
距離が、急にひんやりしている。
昨日まであんなに近かったのに。
名前呼びは冗談と言ったし、あのノリを見て勘違いしたのかもしれない。
……俺のせいか?
思い切って声をかける。
「湊、ひょっとして……怒ってる?」
「怒ってません」
「じゃあ、なんで――」
「志摩先輩には関係ないです」
ぶっきらぼうな言葉。
けれど湊の横顔は、どう見ても“怒り”じゃない。
苦しそうな、迷っているような表情だった。
「……湊」
「作業、戻ります」
すれ違う肩が少し震えていた。
それが見えた瞬間、胸が切られたみたいに痛くなった。
教室でプリントの配布があり、委員として手伝っていた。
「志摩、おまえ字きれいだよな〜。そんで真面目。絶対いい彼氏になるタイプ」
クラスの男子・加藤が、肩を組んできた。
「やめろよ……!」
「じゃあ彼氏つくれよ〜。なぁ、ゆうと?」
「っ……! や、やめろっつって!」
「いいじゃん、名前呼び!」
「恥ずかしいから!」
周りは笑い、加藤はノリノリで俺の肩を揺らす。
まぁ、いつもの軽い悪ノリだ……と思っていた。
――ふと。
廊下の方に視線を向けた。
湊がいた。
プリントを手にしたまま立ち止まり、表情が固まっている。
そのまま、すっと視線を落とし、踵を返した。
「……湊?」
呼んだけれど、声は届かなかった。
◇
文化祭の作業中も、湊はそっけなかった。
会話の返しが短い。
敬語が戻っている。
「湊、これ貼るの手伝って」
「あ、はい。……貼りました」
「ありがと。じゃあ次――」
「俺、後ろの作業やってます」
「え、ちょっと……」
距離が、急にひんやりしている。
昨日まであんなに近かったのに。
名前呼びは冗談と言ったし、あのノリを見て勘違いしたのかもしれない。
……俺のせいか?
思い切って声をかける。
「湊、ひょっとして……怒ってる?」
「怒ってません」
「じゃあ、なんで――」
「志摩先輩には関係ないです」
ぶっきらぼうな言葉。
けれど湊の横顔は、どう見ても“怒り”じゃない。
苦しそうな、迷っているような表情だった。
「……湊」
「作業、戻ります」
すれ違う肩が少し震えていた。
それが見えた瞬間、胸が切られたみたいに痛くなった。



