山頂アタック最終日。巨大な銀貨のような満月が、青白い血のように雪面を染め上げていた。長年の登山仲間、高山悠人と志田陸は、極度の疲労に苛まれながらも、互いの肩を組み、いつもの「ヤマタノオロチポーズ」で笑い合った。それは、二人の間だけで通用する、人間としての魂の確認儀式。だがその無邪気な瞬間、彼らは来るべき破滅の契約を、銀色の月光の下で交わしていたのだ。
次の瞬間、地を揺るがす咆哮と共に、黒い塊が彼らを襲った。ヒグマだ。陸は恐怖に駆られ、反射的に沢へ逃げ出した。背後で月光を浴びたクマが、悠人の顔を深く掻き裂く光景が、陸の脳裏に焼き付いて離れない。彼の右手首には、あの時クマから受けたような、決して治りきらない小さな傷が残された。その傷は、親友を見捨てた陸の、拭えない罪の証であり、同時に呪いの烙印でもあった。
次の瞬間、地を揺るがす咆哮と共に、黒い塊が彼らを襲った。ヒグマだ。陸は恐怖に駆られ、反射的に沢へ逃げ出した。背後で月光を浴びたクマが、悠人の顔を深く掻き裂く光景が、陸の脳裏に焼き付いて離れない。彼の右手首には、あの時クマから受けたような、決して治りきらない小さな傷が残された。その傷は、親友を見捨てた陸の、拭えない罪の証であり、同時に呪いの烙印でもあった。



