第七話 羽音が始祖の巫女の生まれ変わりだと話す
〇神社から帰った夜。
場所:霧生家客間(羽音の部屋)
時刻:深夜
ベッドで横たわり、落ち込む羽音。窓の外には月。
羽音「やっぱり、私なんかが花嫁なんて」
結界を張った夢菜の姿を思い出し、落ち込む。
羽音(私は何もできなかった)(出来損ないだから)(屑だから)(明日にでも、霧生家を出よう)(でも、どこに行けばいいのか)
小花衣家を思い出し、二度と戻りたくないと思う。
羽音(花嫁でなく、使用人として霧生家で雇ってもらえないだろうか)(私なんて使用人が相応しい)
自分の手を見る。そこに優しく振れた瑞葵の手を思い出す。
羽音(いつのまにか、優しさに慣れてしまった。この穏やかな生活を手放したくないと思ってしまう)(私にそんな価値はないのに)
目を閉じていると、部屋の扉が開く音がする。
廊下から差し込む光に黒いシルエット。
羽音(瑞葵様?)(こんな泣きはらした顔、見られたくない)
布団を被って寝たふりをする。
瑞葵、羽音が寝ているのを確かめると手袋を外し、ベッドの端に座る。羽音の手を握る。瑞葵、寝間着姿。
羽音(どうして、瑞葵様がここに?)(なぜ、私の手を?)
戸惑う羽音。
羽音(手が、氷みたいに冷たい)(初めて会ったときと同じ。人の体温ではない)
そっと目を開けると、瑞葵は苦しそうに目を閉じていた。羽音の視線に気づいた瑞葵が目を開ける。この時点では暗くてまだ鱗に気づいていない。
瑞葵「起きていたのか!」慌てて立ち上がる。
羽音、ベッドの上で身体を起こす。
羽音「すみません、うとうとしていて。あの……」
気まずそうな瑞葵。そんな瑞葵に羽音は思いつめたように聞く。
羽音「瑞葵様、本当に私が花嫁でいいのでしょうか?」
思いもよらない質問に驚く瑞葵。でも羽音の目が張れているのに気が付き、ベッドに再び座る。うつむく羽音の顔に手を当て、上を向かせる。
瑞葵「泣いていたのか?」
羽音「申し訳ありません。今日、夢菜が結界を張るのを見て、自分の無能さを思い知りました」「私なんかが瑞葵様の花嫁だなんて、何かの間違いではないでしょうか」項垂れる
瑞葵(そろそろすべて説明しなくてはいけないのかもしれない)
辛そうな顔で自分の右手を見る。鱗は消えかかっているがうっすらと残っている。
瑞葵「俺が羽音を花嫁に選んだ理由を、聞いて欲しい」
はっと顔を上げる羽音。
〇瑞葵の生い立ち回想。
子供の頃の瑞葵の姿から、大人になるまでを2ページぐらいで描く。その背景に地の分として以下の内容(一人称)
俺は物心ついたときから、破魔の力が強かった。両親もそれを喜んでいた。
破魔の力の源は、始祖の巫女が体内に取り込んだ龍と言われている。つまり、破魔の力が強いほど、龍に近い。
十八歳で妖魔退治特能部隊に入隊して、二年後。その破魔の力が異様に強くなってきた。
当初は日々の訓練の成果だと思っていたが、そのうち破魔の力を使うたびに身体に鱗が現れるようになった。
一晩寝れば消える鱗だが、昨年から左胸の部分だけが消えなくなった。それどころか、最近は破魔の力を使うたびに、左胸から左手にかけて鱗が出る
鱗が多くなるほど、身体が冷たくなり、思考がぼんやりしてくる。まるで自分が龍になったような夢を見ることが増えた。
〇現在に戻る。ベッドに腰かける瑞葵とベッドの上で上半身を起こす羽音。
瑞葵「文献を調べたところ『龍化』という症状のようだ」
羽音「ずっと、龍化の症状に苦しんでいたのですか」
辛そうな顔で、瑞葵の手の甲に現れた鱗を見る。
羽音(そんな辛い身体で私を気遣ってくれていたなんて)(何も知らず、甘えてしまっていた)
瑞葵「だが、初めて峠で会ったあの夜。羽音に触れた瞬間、鱗が消えた」
羽音「えっ」峠の夜、抱きしめられたのを思い出す。「でも、私は役立たずで無能で……」
瑞葵「自分のことを卑下する必要はない」首を振る瑞葵「おそらく羽音は始祖の巫女の生まれ変わりだ」
羽音「えっ? 私が?」「私に破魔の力はありません」
瑞葵「巫女も破魔の力を持っていなかった。破魔の力は、巫女が龍を体内に封じたのち、産んだ子供から始まる」
羽音(依子さんもそう言っていた)(でも、私にそんな力があるなんて信じられない)
瑞葵「信じられないという顔をしているな」ふっと笑う
羽音「はい。そんな凄い方の生まれ変わりだなんて……何かの間違いです!」恐れ多いと顔を青くする。
瑞葵、立ち上がり着物の前をはだけさせる。左胸から左腕にかけて、びっしりと鱗に覆われていた。
羽音「それは……」
瑞葵「今回の任務が厳しいものだったうえに、何日も羽音に触れていないからだ」
再びベッドの端に座り、羽音の手を取る。自分の腕に振れさせる。触れた部分から腕の鱗が消えていく。
羽音「これは……」驚いた表情。
瑞葵「始祖の巫女は龍を封じる力を持っていた。羽音にもその能力がある。だから龍化を抑えられるんだ」
羽音、消えていく鱗を見る。
羽音(肌がぬくもりを取り戻している)
鱗が一番あるのは、瑞葵の左胸。羽音がその部分に触れる。
羽音「鱗が消えていきます」
瑞葵「あたたかい。さっきまで、身体が凍ったように感じていた」
だけれど、左上半身の鱗は、なかなか消えない。
羽音「苦しくはないのですか?」
瑞葵「羽音に触れられると、落ち着く」そう言うものの、表情は少し辛そう。
羽音「私に巫女の力があるとして、それをどう使えば瑞葵様の苦しみを減らせるのでしょうか?」(破魔の力のように、巫女の力も意思通りに使えればいいのだけれど)
瑞葵「それは俺にも分からない」「ただ、触れられているところから、巫女の力が流れてくるように思う」
羽音(もっと瑞葵様の役に立ちたい、助けたい。どうすれば)「で、でしたら、手以外の部分でも触れたらどうでしょうか?」
瑞葵「手以外?」
羽音「私から巫女の力が溢れているのなら、触れる面積を増やせばいいかと思いまして」
力説する羽音。躊躇う瑞葵。
瑞葵「羽音を抱きしめたとき、巫女の力をより強く感じたのは確かだが……」
羽音「でしたら、どうぞ抱きしめてください!」勢いよく両手を広げる。
瑞葵「いいのか。そもそも、勝手に夜中に寝室に入ってきたことを咎めないのか?」戸惑う瑞葵。
羽音「私を必要としてのこと。咎める理由はありません。その、少々恥ずかしくはありますが」
照れながら、なおも手を広げる羽音。煽情的な顔に、瑞葵、ごくんと唾をのむ。ベッドの軋む音。瑞葵の身体が羽音に使づく。
瑞葵「それなら……遠慮はしない」
上半身裸の瑞葵に抱きしめられ、予想以上の密着に真っ赤になる羽音。
羽音(瑞葵様の肌が!)
ベッドに押し倒される羽音。軽くパニック。
羽音(……肌に温かい部分と氷のような箇所がある)(……なんとか苦しみを和らげてさしあげたい。私が力になれるのであれば……!)体温の違いに気づき、冷静になる。
瑞葵の上半身に手を回す羽音。驚くように目を見張る瑞葵。
瑞葵、ぎゅっと羽音を抱きしめる。
〇神社から帰った夜。
場所:霧生家客間(羽音の部屋)
時刻:深夜
ベッドで横たわり、落ち込む羽音。窓の外には月。
羽音「やっぱり、私なんかが花嫁なんて」
結界を張った夢菜の姿を思い出し、落ち込む。
羽音(私は何もできなかった)(出来損ないだから)(屑だから)(明日にでも、霧生家を出よう)(でも、どこに行けばいいのか)
小花衣家を思い出し、二度と戻りたくないと思う。
羽音(花嫁でなく、使用人として霧生家で雇ってもらえないだろうか)(私なんて使用人が相応しい)
自分の手を見る。そこに優しく振れた瑞葵の手を思い出す。
羽音(いつのまにか、優しさに慣れてしまった。この穏やかな生活を手放したくないと思ってしまう)(私にそんな価値はないのに)
目を閉じていると、部屋の扉が開く音がする。
廊下から差し込む光に黒いシルエット。
羽音(瑞葵様?)(こんな泣きはらした顔、見られたくない)
布団を被って寝たふりをする。
瑞葵、羽音が寝ているのを確かめると手袋を外し、ベッドの端に座る。羽音の手を握る。瑞葵、寝間着姿。
羽音(どうして、瑞葵様がここに?)(なぜ、私の手を?)
戸惑う羽音。
羽音(手が、氷みたいに冷たい)(初めて会ったときと同じ。人の体温ではない)
そっと目を開けると、瑞葵は苦しそうに目を閉じていた。羽音の視線に気づいた瑞葵が目を開ける。この時点では暗くてまだ鱗に気づいていない。
瑞葵「起きていたのか!」慌てて立ち上がる。
羽音、ベッドの上で身体を起こす。
羽音「すみません、うとうとしていて。あの……」
気まずそうな瑞葵。そんな瑞葵に羽音は思いつめたように聞く。
羽音「瑞葵様、本当に私が花嫁でいいのでしょうか?」
思いもよらない質問に驚く瑞葵。でも羽音の目が張れているのに気が付き、ベッドに再び座る。うつむく羽音の顔に手を当て、上を向かせる。
瑞葵「泣いていたのか?」
羽音「申し訳ありません。今日、夢菜が結界を張るのを見て、自分の無能さを思い知りました」「私なんかが瑞葵様の花嫁だなんて、何かの間違いではないでしょうか」項垂れる
瑞葵(そろそろすべて説明しなくてはいけないのかもしれない)
辛そうな顔で自分の右手を見る。鱗は消えかかっているがうっすらと残っている。
瑞葵「俺が羽音を花嫁に選んだ理由を、聞いて欲しい」
はっと顔を上げる羽音。
〇瑞葵の生い立ち回想。
子供の頃の瑞葵の姿から、大人になるまでを2ページぐらいで描く。その背景に地の分として以下の内容(一人称)
俺は物心ついたときから、破魔の力が強かった。両親もそれを喜んでいた。
破魔の力の源は、始祖の巫女が体内に取り込んだ龍と言われている。つまり、破魔の力が強いほど、龍に近い。
十八歳で妖魔退治特能部隊に入隊して、二年後。その破魔の力が異様に強くなってきた。
当初は日々の訓練の成果だと思っていたが、そのうち破魔の力を使うたびに身体に鱗が現れるようになった。
一晩寝れば消える鱗だが、昨年から左胸の部分だけが消えなくなった。それどころか、最近は破魔の力を使うたびに、左胸から左手にかけて鱗が出る
鱗が多くなるほど、身体が冷たくなり、思考がぼんやりしてくる。まるで自分が龍になったような夢を見ることが増えた。
〇現在に戻る。ベッドに腰かける瑞葵とベッドの上で上半身を起こす羽音。
瑞葵「文献を調べたところ『龍化』という症状のようだ」
羽音「ずっと、龍化の症状に苦しんでいたのですか」
辛そうな顔で、瑞葵の手の甲に現れた鱗を見る。
羽音(そんな辛い身体で私を気遣ってくれていたなんて)(何も知らず、甘えてしまっていた)
瑞葵「だが、初めて峠で会ったあの夜。羽音に触れた瞬間、鱗が消えた」
羽音「えっ」峠の夜、抱きしめられたのを思い出す。「でも、私は役立たずで無能で……」
瑞葵「自分のことを卑下する必要はない」首を振る瑞葵「おそらく羽音は始祖の巫女の生まれ変わりだ」
羽音「えっ? 私が?」「私に破魔の力はありません」
瑞葵「巫女も破魔の力を持っていなかった。破魔の力は、巫女が龍を体内に封じたのち、産んだ子供から始まる」
羽音(依子さんもそう言っていた)(でも、私にそんな力があるなんて信じられない)
瑞葵「信じられないという顔をしているな」ふっと笑う
羽音「はい。そんな凄い方の生まれ変わりだなんて……何かの間違いです!」恐れ多いと顔を青くする。
瑞葵、立ち上がり着物の前をはだけさせる。左胸から左腕にかけて、びっしりと鱗に覆われていた。
羽音「それは……」
瑞葵「今回の任務が厳しいものだったうえに、何日も羽音に触れていないからだ」
再びベッドの端に座り、羽音の手を取る。自分の腕に振れさせる。触れた部分から腕の鱗が消えていく。
羽音「これは……」驚いた表情。
瑞葵「始祖の巫女は龍を封じる力を持っていた。羽音にもその能力がある。だから龍化を抑えられるんだ」
羽音、消えていく鱗を見る。
羽音(肌がぬくもりを取り戻している)
鱗が一番あるのは、瑞葵の左胸。羽音がその部分に触れる。
羽音「鱗が消えていきます」
瑞葵「あたたかい。さっきまで、身体が凍ったように感じていた」
だけれど、左上半身の鱗は、なかなか消えない。
羽音「苦しくはないのですか?」
瑞葵「羽音に触れられると、落ち着く」そう言うものの、表情は少し辛そう。
羽音「私に巫女の力があるとして、それをどう使えば瑞葵様の苦しみを減らせるのでしょうか?」(破魔の力のように、巫女の力も意思通りに使えればいいのだけれど)
瑞葵「それは俺にも分からない」「ただ、触れられているところから、巫女の力が流れてくるように思う」
羽音(もっと瑞葵様の役に立ちたい、助けたい。どうすれば)「で、でしたら、手以外の部分でも触れたらどうでしょうか?」
瑞葵「手以外?」
羽音「私から巫女の力が溢れているのなら、触れる面積を増やせばいいかと思いまして」
力説する羽音。躊躇う瑞葵。
瑞葵「羽音を抱きしめたとき、巫女の力をより強く感じたのは確かだが……」
羽音「でしたら、どうぞ抱きしめてください!」勢いよく両手を広げる。
瑞葵「いいのか。そもそも、勝手に夜中に寝室に入ってきたことを咎めないのか?」戸惑う瑞葵。
羽音「私を必要としてのこと。咎める理由はありません。その、少々恥ずかしくはありますが」
照れながら、なおも手を広げる羽音。煽情的な顔に、瑞葵、ごくんと唾をのむ。ベッドの軋む音。瑞葵の身体が羽音に使づく。
瑞葵「それなら……遠慮はしない」
上半身裸の瑞葵に抱きしめられ、予想以上の密着に真っ赤になる羽音。
羽音(瑞葵様の肌が!)
ベッドに押し倒される羽音。軽くパニック。
羽音(……肌に温かい部分と氷のような箇所がある)(……なんとか苦しみを和らげてさしあげたい。私が力になれるのであれば……!)体温の違いに気づき、冷静になる。
瑞葵の上半身に手を回す羽音。驚くように目を見張る瑞葵。
瑞葵、ぎゅっと羽音を抱きしめる。



