第十二話 虐げられていた理由と母親が残した水晶の秘密
〇十一話の続き
羽音(双羽はお母様の名前)「あの、母を知っているのですか?」
男「……はい。隣にいるのは妖魔退治特能部隊の方ですね。私は神楽坂響。破魔の力を使って刀鍛冶を生業にしています」
瑞葵「神楽坂。たしかこの刀を作った刀鍛冶の名が、神楽坂だった。俺は霧生瑞葵、隣にいるのは婚約者の羽音だ」刀を見せる仕草。
神楽坂、瑞葵の手にある刀を見て頷く。
神楽坂「そうです。帝都にある店から瑞葵様が使う刀を作って欲しいと依頼があり、私が手掛けました」「それから」羽音に視線を向ける。「彼女の娘が、霧生家当主に嫁ぐのですね」複雑そうな顔。
羽音「あの、母とはどのような知り合いなのでしょうか?」「母は幼いときに亡くなって、母について何も知らないのです」
神楽坂「双羽が事故で亡くなったのは知っています。双羽亡きあと、あなたは幸せに暮らせましたか?」
言い淀む羽音。瑞葵、代わりに答える。
瑞葵「俺の目から見ると、小花衣家での暮らしは幸せとはいいがたいだろう」
羽音「瑞葵様!」
瑞葵「使用人以下の待遇だった」淡々と語る瑞葵。
神楽坂「あのとき、雨の中を帰ると言い出した双羽を俺が止めていれば……」苦悶の表情を浮かべる神楽坂。
羽音「! 母が乗る馬車が事故にあったのは帝都から離れた山の中と聞きました。母は神楽坂さんに会いに行っていたのですか? 何のために? 教えてください」詰め寄る羽音。
神楽坂 俯きながら話す「いつか、あなたに会わなくてはいけないと思っていました。そのあなたが弟子を助けてくれた」苦しそうな顔で神楽坂が羽音と視線を合わせる「すべてを話す時が来たんでしょう」
〇神楽坂の回想 ※文章は地の分、()内はそれに合わせた絵。
(若い頃の双羽と神楽坂の姿。十代ぐらい)
――私と双羽は幼馴染で、年頃になるとお互い恋心を抱くようになりました。
私は結婚を申し込み、双羽もそれを了承してくれた。
(双羽の悲しむシルエット。その横には前当主や双羽両親のシルエットも)
しかし、双羽には強い破魔の力があった。それに目をつけた小花衣家の前当主が、自分の息子と双羽の結婚を強引に推し進めた。
妖魔退治特能部隊で実績を重ねる男との縁談を、双羽の親は喜んで受けた。
(花嫁姿の双羽)
そして双羽は小花衣家に嫁ぎ、
(刀鍛冶として働く男の姿)
私は彼女を忘れるように帝都を離れ、刀鍛冶をしていた師匠に弟子入りした。
(刀のイラスト)
妖魔退治特能部隊が使う刀は、破魔の力をその刃に通す必要がある特殊なもの。作れるのは、破魔の力を持つものだけ。
私には妖魔退治特能部隊に入隊できるほどの破魔の力はない。だけれど、刀鍛冶としてなら……自分にも何か価値があると示したかった。
(山の風景)
そこから数年が経ち、私は独り立ちしてこの山小屋で暮らしだした。
(山小屋を訪れる親子、対面する神楽坂)
ある日、双羽が幼い幼女の手を引き、ここを訪ねてきた。その幼女の名は羽音。
双羽は羽音が始祖の巫女の力を宿しているのに気が付いていた。そしてそれを隠したいと俺に頼んできたんだ。
(双羽と神楽坂が対面する絵)
双羽「破魔の力があるばかりに、私はあなたと結婚できなかった」「強すぎる力はこの子の人生を翻弄する」「この子には、私と違って自由に生きて欲しい」
そう頼む双羽は、俺に『巫女の力を封じる水晶』を作って欲しいと依頼してきた。
(双羽が神楽坂に紙を手渡す。手のアップ)
双羽は妖魔退治特能部隊の書庫から持ってきたという、一枚の紙を見せた。そこには巫女の力を封じる方法が書かれていた。
巫女の力は強くなりすぎると巫女自身の負担になる。それを防ぐために水晶が作られ、始祖の巫女も神気を使うとき以外はそれを持っていた。
(水晶を探す神楽坂の姿)
その日以降、俺は上質の水晶を探し、それを破魔の力を使って磨き続けた。
(再び訪れた双羽の姿。やつれている)
次に双羽が来たのは、半年後。随分とやつれ急いでいた。どうやら、前回俺と会っていたのを旦那に知られ、家から出るのもままならないらしい。そのため娘は家に置いてきたと言っていた。
(山小屋の入口で話す二人)
双羽の夫は結婚前の俺と双羽の関係を調べ、不貞を疑い、羽音は自分の子ではないとまで言いだしたらしい。
(ここからはコマ割りして、セリフになる)
双羽「羽音に破魔の力はない。始祖の巫女であることを隠し通せば、あの人は私を役立たずと家から追い出すかもしれない」「他に女性もいるし、そのほうが私と双羽にとって幸せかも」思いつめた表情
神楽坂「……もしそうなったら、ここに来ればいい」双羽の手に、自分の手を重ねる
双羽「そんなことできないわ。あの子は夫との子供。あなたに迷惑はかけれない」神楽坂の手をそっと離す。
神楽坂「双羽の子供だろう? 幼い時の双羽によく似ていた」「……無理にとは言わないが、俺は待っている」決意のこもった表情。
神楽坂、水晶を双羽に渡す。
急いで帰る双羽。馬車が車輪を滑らせ、谷底に落ちる。
〇現在
場所:山小屋の中
囲炉裏を囲んで座る羽音、瑞葵、神楽坂、弟子・藤吉。日下部たちは先に帰った。
羽音「この水晶にそんな力があったなんて」水晶を手に呟く。
神楽坂「始祖の巫女の力を完全に抑えるものは、俺の力では作れなかった。それでも、他人に神気を持つことを知られないだけの効力はある」
神楽坂、不安そうに瑞葵を見る。
神楽坂「霧生様にも話を聞いてもらったのは、あなたほどの力があるお方なら羽音さんを守ってくれると思ったからです」「どうか、双羽の娘をよろしくお願いします」
瑞葵「承知した。羽音が穏やかな人生を送れるよう、尽力する」「彼女は俺にとって唯一無二の女性だ」
言い切る瑞葵。はっとして顔を赤らめる羽音。
神楽坂「それを聞いて安心しました」羽音と瑞樹の様子に、口元を綻ばせる。
羽音「あ、あのっ」「それでは、水晶を手放せば、始祖の巫女の力が高まるのでしょうか?」水晶を握ったまま、神楽坂に聞く。
神楽坂「おそらく。ただ、時間をかけて徐々に神気が高まるか、何かのきっかけで急激に神気を扱えるようになるか……」「前例がないので分かりません」
羽音「そうですか。神気が高まれば瑞葵様を助けられると思っ……」あっ、と口を塞ぐ
羽音(ここで龍化について話すわけにはいかない)「あ、あの何でもないです」誤魔化す。
瑞葵「……言いたいことは分かった。それについては、後で話そう」「神楽坂殿、長居をした。倒した妖魔の件もあるし、今日はこれで帰る」立ち上がる瑞葵。続く羽音。
神楽坂「何もおもてなしできず、申し訳ありません」神楽坂と弟子も立ち上がる。
外に出る。
羽音(お父様が私の顔を嫌ったのは、お母様に似ていたからだったんだ)(そして私を忌み嫌ったのは、お母様が不貞のすえに産んだ子供だと思ったから)
双羽、今までの境遇を思い出し、悲しそうな顔をする。
立ち去り際、瑞葵が振り返る。
瑞葵「それから、この刀を作ってくれた礼を言う。とても使いやすい」
神楽坂「ありがとうございます。その刀を作るにあたっては、弟の蓮斗様が何度も鍛冶場に足を運んでくださいました」にこにこ笑いながら話す。
瑞葵「蓮斗が?」怪訝な顔。
神楽坂「はい。実にお兄様想いの方で」「なんでもその刀に……」
〇十一話の続き
羽音(双羽はお母様の名前)「あの、母を知っているのですか?」
男「……はい。隣にいるのは妖魔退治特能部隊の方ですね。私は神楽坂響。破魔の力を使って刀鍛冶を生業にしています」
瑞葵「神楽坂。たしかこの刀を作った刀鍛冶の名が、神楽坂だった。俺は霧生瑞葵、隣にいるのは婚約者の羽音だ」刀を見せる仕草。
神楽坂、瑞葵の手にある刀を見て頷く。
神楽坂「そうです。帝都にある店から瑞葵様が使う刀を作って欲しいと依頼があり、私が手掛けました」「それから」羽音に視線を向ける。「彼女の娘が、霧生家当主に嫁ぐのですね」複雑そうな顔。
羽音「あの、母とはどのような知り合いなのでしょうか?」「母は幼いときに亡くなって、母について何も知らないのです」
神楽坂「双羽が事故で亡くなったのは知っています。双羽亡きあと、あなたは幸せに暮らせましたか?」
言い淀む羽音。瑞葵、代わりに答える。
瑞葵「俺の目から見ると、小花衣家での暮らしは幸せとはいいがたいだろう」
羽音「瑞葵様!」
瑞葵「使用人以下の待遇だった」淡々と語る瑞葵。
神楽坂「あのとき、雨の中を帰ると言い出した双羽を俺が止めていれば……」苦悶の表情を浮かべる神楽坂。
羽音「! 母が乗る馬車が事故にあったのは帝都から離れた山の中と聞きました。母は神楽坂さんに会いに行っていたのですか? 何のために? 教えてください」詰め寄る羽音。
神楽坂 俯きながら話す「いつか、あなたに会わなくてはいけないと思っていました。そのあなたが弟子を助けてくれた」苦しそうな顔で神楽坂が羽音と視線を合わせる「すべてを話す時が来たんでしょう」
〇神楽坂の回想 ※文章は地の分、()内はそれに合わせた絵。
(若い頃の双羽と神楽坂の姿。十代ぐらい)
――私と双羽は幼馴染で、年頃になるとお互い恋心を抱くようになりました。
私は結婚を申し込み、双羽もそれを了承してくれた。
(双羽の悲しむシルエット。その横には前当主や双羽両親のシルエットも)
しかし、双羽には強い破魔の力があった。それに目をつけた小花衣家の前当主が、自分の息子と双羽の結婚を強引に推し進めた。
妖魔退治特能部隊で実績を重ねる男との縁談を、双羽の親は喜んで受けた。
(花嫁姿の双羽)
そして双羽は小花衣家に嫁ぎ、
(刀鍛冶として働く男の姿)
私は彼女を忘れるように帝都を離れ、刀鍛冶をしていた師匠に弟子入りした。
(刀のイラスト)
妖魔退治特能部隊が使う刀は、破魔の力をその刃に通す必要がある特殊なもの。作れるのは、破魔の力を持つものだけ。
私には妖魔退治特能部隊に入隊できるほどの破魔の力はない。だけれど、刀鍛冶としてなら……自分にも何か価値があると示したかった。
(山の風景)
そこから数年が経ち、私は独り立ちしてこの山小屋で暮らしだした。
(山小屋を訪れる親子、対面する神楽坂)
ある日、双羽が幼い幼女の手を引き、ここを訪ねてきた。その幼女の名は羽音。
双羽は羽音が始祖の巫女の力を宿しているのに気が付いていた。そしてそれを隠したいと俺に頼んできたんだ。
(双羽と神楽坂が対面する絵)
双羽「破魔の力があるばかりに、私はあなたと結婚できなかった」「強すぎる力はこの子の人生を翻弄する」「この子には、私と違って自由に生きて欲しい」
そう頼む双羽は、俺に『巫女の力を封じる水晶』を作って欲しいと依頼してきた。
(双羽が神楽坂に紙を手渡す。手のアップ)
双羽は妖魔退治特能部隊の書庫から持ってきたという、一枚の紙を見せた。そこには巫女の力を封じる方法が書かれていた。
巫女の力は強くなりすぎると巫女自身の負担になる。それを防ぐために水晶が作られ、始祖の巫女も神気を使うとき以外はそれを持っていた。
(水晶を探す神楽坂の姿)
その日以降、俺は上質の水晶を探し、それを破魔の力を使って磨き続けた。
(再び訪れた双羽の姿。やつれている)
次に双羽が来たのは、半年後。随分とやつれ急いでいた。どうやら、前回俺と会っていたのを旦那に知られ、家から出るのもままならないらしい。そのため娘は家に置いてきたと言っていた。
(山小屋の入口で話す二人)
双羽の夫は結婚前の俺と双羽の関係を調べ、不貞を疑い、羽音は自分の子ではないとまで言いだしたらしい。
(ここからはコマ割りして、セリフになる)
双羽「羽音に破魔の力はない。始祖の巫女であることを隠し通せば、あの人は私を役立たずと家から追い出すかもしれない」「他に女性もいるし、そのほうが私と双羽にとって幸せかも」思いつめた表情
神楽坂「……もしそうなったら、ここに来ればいい」双羽の手に、自分の手を重ねる
双羽「そんなことできないわ。あの子は夫との子供。あなたに迷惑はかけれない」神楽坂の手をそっと離す。
神楽坂「双羽の子供だろう? 幼い時の双羽によく似ていた」「……無理にとは言わないが、俺は待っている」決意のこもった表情。
神楽坂、水晶を双羽に渡す。
急いで帰る双羽。馬車が車輪を滑らせ、谷底に落ちる。
〇現在
場所:山小屋の中
囲炉裏を囲んで座る羽音、瑞葵、神楽坂、弟子・藤吉。日下部たちは先に帰った。
羽音「この水晶にそんな力があったなんて」水晶を手に呟く。
神楽坂「始祖の巫女の力を完全に抑えるものは、俺の力では作れなかった。それでも、他人に神気を持つことを知られないだけの効力はある」
神楽坂、不安そうに瑞葵を見る。
神楽坂「霧生様にも話を聞いてもらったのは、あなたほどの力があるお方なら羽音さんを守ってくれると思ったからです」「どうか、双羽の娘をよろしくお願いします」
瑞葵「承知した。羽音が穏やかな人生を送れるよう、尽力する」「彼女は俺にとって唯一無二の女性だ」
言い切る瑞葵。はっとして顔を赤らめる羽音。
神楽坂「それを聞いて安心しました」羽音と瑞樹の様子に、口元を綻ばせる。
羽音「あ、あのっ」「それでは、水晶を手放せば、始祖の巫女の力が高まるのでしょうか?」水晶を握ったまま、神楽坂に聞く。
神楽坂「おそらく。ただ、時間をかけて徐々に神気が高まるか、何かのきっかけで急激に神気を扱えるようになるか……」「前例がないので分かりません」
羽音「そうですか。神気が高まれば瑞葵様を助けられると思っ……」あっ、と口を塞ぐ
羽音(ここで龍化について話すわけにはいかない)「あ、あの何でもないです」誤魔化す。
瑞葵「……言いたいことは分かった。それについては、後で話そう」「神楽坂殿、長居をした。倒した妖魔の件もあるし、今日はこれで帰る」立ち上がる瑞葵。続く羽音。
神楽坂「何もおもてなしできず、申し訳ありません」神楽坂と弟子も立ち上がる。
外に出る。
羽音(お父様が私の顔を嫌ったのは、お母様に似ていたからだったんだ)(そして私を忌み嫌ったのは、お母様が不貞のすえに産んだ子供だと思ったから)
双羽、今までの境遇を思い出し、悲しそうな顔をする。
立ち去り際、瑞葵が振り返る。
瑞葵「それから、この刀を作ってくれた礼を言う。とても使いやすい」
神楽坂「ありがとうございます。その刀を作るにあたっては、弟の蓮斗様が何度も鍛冶場に足を運んでくださいました」にこにこ笑いながら話す。
瑞葵「蓮斗が?」怪訝な顔。
神楽坂「はい。実にお兄様想いの方で」「なんでもその刀に……」



