第一話 ヒロイン羽音の置かれている環境と、ヒーロー瑞葵との出会い
〇プロローグ
場所:夜の峠
峠で妖魔(黒い靄のようなもの)に襲われ逃げるヒロイン・小花衣羽音(こばないはおと)
そこへヒーロー霧生瑞葵(きりゅう みずき)が現れ、羽音を救う。
至近距離で見つめ合うふたり
瑞葵「見つけた、俺の唯一無二。お前なら俺を封じてくれる」
〇羽音が暮らす家の様子
場所:小花衣の家(立派な日本家屋)
時刻:朝(時系列だとプロローグの前日)季節は初秋。
古びた着物で家の掃除をする羽音。
母親は亡くなり、一緒に住んでいるのは実父、義母、母違いの妹・夢菜(ゆめな)。
小花衣の者は全員着物姿。羽音はみすぼらしい格好。髪は首の後ろでひとつに纏めている。それに対し夢菜は鮮やかな着物を着ている。髪もつやつや。
羽音、料理を運ぶ最中に廊下で夢菜に足を引っかけられ、膳を落としてしまう。
義母「この屑が。碌に仕事もできないなんて、生きている価値すらないね」
羽音「申し訳ありません」
義母「屑を家に置いてやっているんだ。私たちのために働くのは当然だろう。それなのに、夕食を落とすなんて、何をやっているんだい!」
羽音「すみません。あ、あの。まだ、食事はありますので、すぐに用意を……」
顔を上げる羽音。着物の袖で口元を隠し笑う夢菜。素早く義母が羽音の顔をぶつ。
義母「その顔を私に見せるんじゃないよ。さっさと夕食を持っておいで」
改めて夕食の用意をする羽音。
使用人達は、冷めた目で羽音を見ている。
羽音「お待たせいたしました」
夢菜「遅い! いったいどれだけ待たせたら気がすむの」
義母「本当、使えないんだから。少し反省が必要のようね」
羽音を庭に突き落とす。使用人に用意させていた桶の水を羽音にかける。
義母「私たちが食事を終えるまで、一歩も動くんじゃないよ!」
食事を始める三人。実父も羽音を庇おうとはしない。
三人の食事が終わる。濡れた着物のまま片付けを終えたところで、義母によって納屋に連れていかれ外から閂をおろされる。
義母「今夜はここで反省しな」
夕食は無し。夜になって冷えてきても、濡れた身体を拭くことさえできない。
羽音「寒い」
納屋の中にあった汚れた藁のむしろで身体を包み、手をすり合わせる。
羽音「全部、破魔の力がない私が悪いから…」
言いながら、帯の間から小袋を取り出す。その中には紋様が刻まれた水晶が入っている。
羽音「お母様、おやすみなさい」
水晶は母親の形見。額にそれを当てそういうと、また小袋に仕舞う。
身を小さくしてむしろに包まり寒さに耐える羽音。小袋の中で水晶が光る。
〇この物語の設定の説明。
・場所は「大日帝国」 妖魔が人間の生活を脅かす。人を食べたり、人に乗り移って残虐な行為を繰り返す。人に乗り移れるのは、多数の人間を食べて力を持った妖魔。
・それらを退治するのが、破魔の力を持つ者。彼らは軍の妖魔退治特能部隊に所属している(任意)
・彼らの祖先は千年以上前に荒ぶる龍を体内に封じた巫女(始祖の巫女と呼ばれている)。血は薄まったが、その血縁に一定の割合で破魔の力を持つ者が生れる。
・羽音の家系もその傍系で、夢菜には結界を張りその中に妖魔を閉じ込める力がある。
・妖魔退治特能部隊に所属できるのは、強い破魔の力を持ち所属を希望した人。夢菜は所属していない。瑞葵は妖魔退治特能部隊の隊長。
・前妻の子供で破魔の力がない羽音は実家で冷遇される(羽音二十歳、夢菜十八歳)。羽音の母親が亡くなったのは羽音が三歳のとき。後妻は実父の愛人だった。
・始祖の巫女の直系が霧生家。その若き当主が二十五歳の瑞葵
・破魔の力を持つ女性は、その力を持つ子供を産みやすいとされている。
〇次の日、薪割りをしている羽音
場所:羽音の実家の裏庭
時刻:昼過ぎ
裏庭で薪割をしている羽音。濡れたまま寝たので風邪をひいた。
義母「屑(羽音は実家で屑と呼ばれている)、私の実家に行って、夢菜が『選定の儀』で着る振袖を貰ってきなさい」
羽音「今から、ですか?」
羽音、薪割をしていた手を休め、額の汗を拭う。
・「選定の儀」の説明。霧生家当主である瑞葵の伴侶を決めるために、傍系含め破魔の力を持つ妙齢の女性が明日集められる。
義母の実家は隣街で呉服屋をしていて、そこで選定の儀で着る着物を仕立てた。
義母「さっさとしなさい」
羽音「はい。申し訳ありません」
追い立てられるように実家を出る羽音。
義母の実家は峠の向こうで、往復七里の道のり(約28キロ、徒歩六時間ぐらい)
〇義母の実家
ふらふらになりながら義母の実家に辿りつく。呉服屋の裏口で義母の母と対面。
羽音「すみません。夢菜の着る着物を受け取りにまいりました」
義母の母「あぁ。屑が来たのかい。可愛い孫のために設えた振袖なんだから、絶対に汚すんじゃないよ」
羽音「はい」
義母の母「それにしても、あんたと夢菜はまるで違うね。こんな屑が姉なんて、夢菜も可哀相だよ」
羽音「申し訳ありません」(どこに言っても、私は『屑』と呼ばれる。どこにも私の居場所はない)
暗い顔。着物を抱えて帰路につく羽音。
峠の手前にある神社で休憩。疲れと熱でうつらうつらする。気が付くと、辺りが暗くなっていた。
羽音「いけない。もう日が暮れている。早く帰らなきゃ、また折檻されてしまう」
道中、老夫婦とすれ違い「最近若い女性が殺される事件が増えているから気をつけるんだよ」と声をかけられる(以降の事件の伏線になる)
〇夜の峠
峠を急いでこえる羽音の前に、妖魔が現れる(黒い靄のような実体のないもの)
妖魔は人の血肉を食べ、妖力を増す。
羽音「助けて‼」
必死で逃げるも、妖魔は追いかけてきてすぐ真後ろに。羽音、転んでしまう。
羽音(もうだめ)
妖魔が大きく口(らしきもの)を開け、羽音を食べようとする。
羽音(こんな化けものに食べられて死ぬなんて、私は何のために生れてきたのだろう。これもすべて、私に破魔の力がなかったから)
絶望に襲われ、恐怖から目を閉じる。
次の瞬間、妖魔の断末魔がして羽音は目を開ける。
瑞葵が現れる。妖魔を殺したのは瑞葵。軍服を着て手袋をしている。刀を手にしている。
羽音「あ、ありがとうございます」
瑞葵「どうしてこんな夜中に歩いて……」
胡乱な目でしゃがみ込む羽音を見下ろす。しかし次の瞬間「うっ」と苦しそうな声を上げ、蹲る。額には脂汗が浮かぶ。首のうしろに龍の鱗が現れる(羽音は気づかない)
羽音「どうしたのですか」
瑞葵「何でもない。それより早くここを去れ」
戸惑う羽音。だけれど苦しむ瑞葵を放ってはおけない。周囲を見渡すと、近くに清水が流れていた。
羽音「少し待ってください」
清水で手ぬぐいを濡らし、瑞葵の額の汗を拭う。
瑞葵「いいから、俺から離れろ!」羽音の手を掴んで強引に自分から離そうとする。
羽音「冷たい!」その手の冷たさに驚く。
羽音の手を掴んだとたん、瑞葵の首の鱗が消える。
首に手を当て、鱗が消えたことに不思議そうな顔をする瑞葵。
瑞葵「いったいこれは……」呆然とする。
羽音「あの……?」何が起こったのか理解していない。
瑞葵の手が羽音の両頬を包み混む。氷のような冷たさに、羽音が身体をびくっとさせる。
瑞葵「見つけた、俺の唯一無二。お前なら俺を封じてくれる」
羽音「えっ?」
羽音の手から風呂敷包みが落ち、中から振袖の柄が露わになる。
〇プロローグ
場所:夜の峠
峠で妖魔(黒い靄のようなもの)に襲われ逃げるヒロイン・小花衣羽音(こばないはおと)
そこへヒーロー霧生瑞葵(きりゅう みずき)が現れ、羽音を救う。
至近距離で見つめ合うふたり
瑞葵「見つけた、俺の唯一無二。お前なら俺を封じてくれる」
〇羽音が暮らす家の様子
場所:小花衣の家(立派な日本家屋)
時刻:朝(時系列だとプロローグの前日)季節は初秋。
古びた着物で家の掃除をする羽音。
母親は亡くなり、一緒に住んでいるのは実父、義母、母違いの妹・夢菜(ゆめな)。
小花衣の者は全員着物姿。羽音はみすぼらしい格好。髪は首の後ろでひとつに纏めている。それに対し夢菜は鮮やかな着物を着ている。髪もつやつや。
羽音、料理を運ぶ最中に廊下で夢菜に足を引っかけられ、膳を落としてしまう。
義母「この屑が。碌に仕事もできないなんて、生きている価値すらないね」
羽音「申し訳ありません」
義母「屑を家に置いてやっているんだ。私たちのために働くのは当然だろう。それなのに、夕食を落とすなんて、何をやっているんだい!」
羽音「すみません。あ、あの。まだ、食事はありますので、すぐに用意を……」
顔を上げる羽音。着物の袖で口元を隠し笑う夢菜。素早く義母が羽音の顔をぶつ。
義母「その顔を私に見せるんじゃないよ。さっさと夕食を持っておいで」
改めて夕食の用意をする羽音。
使用人達は、冷めた目で羽音を見ている。
羽音「お待たせいたしました」
夢菜「遅い! いったいどれだけ待たせたら気がすむの」
義母「本当、使えないんだから。少し反省が必要のようね」
羽音を庭に突き落とす。使用人に用意させていた桶の水を羽音にかける。
義母「私たちが食事を終えるまで、一歩も動くんじゃないよ!」
食事を始める三人。実父も羽音を庇おうとはしない。
三人の食事が終わる。濡れた着物のまま片付けを終えたところで、義母によって納屋に連れていかれ外から閂をおろされる。
義母「今夜はここで反省しな」
夕食は無し。夜になって冷えてきても、濡れた身体を拭くことさえできない。
羽音「寒い」
納屋の中にあった汚れた藁のむしろで身体を包み、手をすり合わせる。
羽音「全部、破魔の力がない私が悪いから…」
言いながら、帯の間から小袋を取り出す。その中には紋様が刻まれた水晶が入っている。
羽音「お母様、おやすみなさい」
水晶は母親の形見。額にそれを当てそういうと、また小袋に仕舞う。
身を小さくしてむしろに包まり寒さに耐える羽音。小袋の中で水晶が光る。
〇この物語の設定の説明。
・場所は「大日帝国」 妖魔が人間の生活を脅かす。人を食べたり、人に乗り移って残虐な行為を繰り返す。人に乗り移れるのは、多数の人間を食べて力を持った妖魔。
・それらを退治するのが、破魔の力を持つ者。彼らは軍の妖魔退治特能部隊に所属している(任意)
・彼らの祖先は千年以上前に荒ぶる龍を体内に封じた巫女(始祖の巫女と呼ばれている)。血は薄まったが、その血縁に一定の割合で破魔の力を持つ者が生れる。
・羽音の家系もその傍系で、夢菜には結界を張りその中に妖魔を閉じ込める力がある。
・妖魔退治特能部隊に所属できるのは、強い破魔の力を持ち所属を希望した人。夢菜は所属していない。瑞葵は妖魔退治特能部隊の隊長。
・前妻の子供で破魔の力がない羽音は実家で冷遇される(羽音二十歳、夢菜十八歳)。羽音の母親が亡くなったのは羽音が三歳のとき。後妻は実父の愛人だった。
・始祖の巫女の直系が霧生家。その若き当主が二十五歳の瑞葵
・破魔の力を持つ女性は、その力を持つ子供を産みやすいとされている。
〇次の日、薪割りをしている羽音
場所:羽音の実家の裏庭
時刻:昼過ぎ
裏庭で薪割をしている羽音。濡れたまま寝たので風邪をひいた。
義母「屑(羽音は実家で屑と呼ばれている)、私の実家に行って、夢菜が『選定の儀』で着る振袖を貰ってきなさい」
羽音「今から、ですか?」
羽音、薪割をしていた手を休め、額の汗を拭う。
・「選定の儀」の説明。霧生家当主である瑞葵の伴侶を決めるために、傍系含め破魔の力を持つ妙齢の女性が明日集められる。
義母の実家は隣街で呉服屋をしていて、そこで選定の儀で着る着物を仕立てた。
義母「さっさとしなさい」
羽音「はい。申し訳ありません」
追い立てられるように実家を出る羽音。
義母の実家は峠の向こうで、往復七里の道のり(約28キロ、徒歩六時間ぐらい)
〇義母の実家
ふらふらになりながら義母の実家に辿りつく。呉服屋の裏口で義母の母と対面。
羽音「すみません。夢菜の着る着物を受け取りにまいりました」
義母の母「あぁ。屑が来たのかい。可愛い孫のために設えた振袖なんだから、絶対に汚すんじゃないよ」
羽音「はい」
義母の母「それにしても、あんたと夢菜はまるで違うね。こんな屑が姉なんて、夢菜も可哀相だよ」
羽音「申し訳ありません」(どこに言っても、私は『屑』と呼ばれる。どこにも私の居場所はない)
暗い顔。着物を抱えて帰路につく羽音。
峠の手前にある神社で休憩。疲れと熱でうつらうつらする。気が付くと、辺りが暗くなっていた。
羽音「いけない。もう日が暮れている。早く帰らなきゃ、また折檻されてしまう」
道中、老夫婦とすれ違い「最近若い女性が殺される事件が増えているから気をつけるんだよ」と声をかけられる(以降の事件の伏線になる)
〇夜の峠
峠を急いでこえる羽音の前に、妖魔が現れる(黒い靄のような実体のないもの)
妖魔は人の血肉を食べ、妖力を増す。
羽音「助けて‼」
必死で逃げるも、妖魔は追いかけてきてすぐ真後ろに。羽音、転んでしまう。
羽音(もうだめ)
妖魔が大きく口(らしきもの)を開け、羽音を食べようとする。
羽音(こんな化けものに食べられて死ぬなんて、私は何のために生れてきたのだろう。これもすべて、私に破魔の力がなかったから)
絶望に襲われ、恐怖から目を閉じる。
次の瞬間、妖魔の断末魔がして羽音は目を開ける。
瑞葵が現れる。妖魔を殺したのは瑞葵。軍服を着て手袋をしている。刀を手にしている。
羽音「あ、ありがとうございます」
瑞葵「どうしてこんな夜中に歩いて……」
胡乱な目でしゃがみ込む羽音を見下ろす。しかし次の瞬間「うっ」と苦しそうな声を上げ、蹲る。額には脂汗が浮かぶ。首のうしろに龍の鱗が現れる(羽音は気づかない)
羽音「どうしたのですか」
瑞葵「何でもない。それより早くここを去れ」
戸惑う羽音。だけれど苦しむ瑞葵を放ってはおけない。周囲を見渡すと、近くに清水が流れていた。
羽音「少し待ってください」
清水で手ぬぐいを濡らし、瑞葵の額の汗を拭う。
瑞葵「いいから、俺から離れろ!」羽音の手を掴んで強引に自分から離そうとする。
羽音「冷たい!」その手の冷たさに驚く。
羽音の手を掴んだとたん、瑞葵の首の鱗が消える。
首に手を当て、鱗が消えたことに不思議そうな顔をする瑞葵。
瑞葵「いったいこれは……」呆然とする。
羽音「あの……?」何が起こったのか理解していない。
瑞葵の手が羽音の両頬を包み混む。氷のような冷たさに、羽音が身体をびくっとさせる。
瑞葵「見つけた、俺の唯一無二。お前なら俺を封じてくれる」
羽音「えっ?」
羽音の手から風呂敷包みが落ち、中から振袖の柄が露わになる。



