――カラン、カラン
「『願い砂の魔法屋』へようこそ」
お客様がいらしゃった際に私は声をかけた。
色彩豊かな願い砂が棚に置かれ、グラデーションように綺麗に立ち並ぶ。
店内にはコーヒーの香りが漂っていた。
ここへ来る人々は、自分へのご褒美にしたり誰かへの贈り物として買いに来る人が多い。
愛野は私が渡した願い砂無事に喜んでくれたらいいな。
そう思っているとお母さんが心配した顔で私の近くにやってきた。
「佳凪、今日も手伝ってくれてありがとう。課題とか大丈夫なのかい」
「うん、大丈夫だよ。このお店毎回思うけど、素敵な場所で好き」
「嬉しいことを言ってくれるじゃないか」
私の言葉をお父さんが聞きつけたみたいで嬉しそうに微笑む。
笑顔が溢れる周りの様子を見渡すと必ず感じることだった。
それで、ふと思うことがある。
――誰かのために私は生まれ持った不思議な力を使いたいと。
笑顔になれるお手伝いをしたい。
「すいません、ちょっといいですか」
「はい、どうされましたか」
声を掛けてきたのは、若い男性だった。制服を着ていることから学生という事だけが分かる。
緩んだ気持ちを切り替えてお客様に対応し始めた。
「彼女への贈り物に悩んでいて――」
「それなら、こちらはいかがですか」
棚からお客様からの希望に沿ったものから、合いそうな願い砂を取り出して提案した。
このお店で売られている願い砂は私たちの手作りで、それを使用する人々がどんな人たちなのかは分からない。
幸福を感じていただくように祈るだけ。
利用してくる方が居てくれる限り、この物語はどこまでも続いていく。



