午後の授業も終わり放課後になると、佳凪から公園に少し寄ろうと誘われて一緒に見慣れた通学路を歩いていた。
「あの暑かった夏はどこへ行ったんだろう」
「すっかり秋だもんね。肌寒いよ」
 霜が降りてから気温は一気に変化し、身体がそれに追いつかずより必然的に寒く感じる。
 寒さの変化が今年は緩やかであったらいいな。
 幼い頃よく遊んでいた公園にたどり着くと佳凪は鞄の中からあるものを取り出した。
「愛野、これあげる」
「えっ、でもこれって」
 受け取って貰ったものをよく見てみると、ラッピングされた袋の中にエメラルドグリーンの綺麗な砂が入っていった。
 不思議な力がこの砂にはあると言うようにキラキラ輝いている。私はこれが何かもう分かっていた。『願い砂の魔法屋』に売っている〝願い砂〟だ。
「そうそう、私のお店で売っているやつ。愛野が元気がなかった時に渡そうと思って前もって用意していたものだよ。私のお手製だからお金とか考えるの禁止!」
「うん。だけど、本当に貰ってもいいの」
 佳凪にはいつも助けて貰っている方だからなんだか申し訳ない。
 どんな力が宿っているのかは分からないけれど、珍しいもののはずだ。
「本当にいいよ。どんな効果があるのかはお楽しみ。寝る前にルナちゃんがいるところでやってね」
「うん、ありがとう」
 沢山言い過ぎても佳凪は引かないことが分かるから素直に貰っておこうと思った。
 願い砂には私への佳凪の想いが籠もっているはずだから。
 その後は、佳凪はお店の手伝いをするよう別れて家に帰宅する。
「にゃー」
 家の中へ入った瞬間にルナが出迎えてくれて嬉しい気持ちが溢れた。
 一日の疲れもルナによって嘘みたいに消えていく。
 ルナを抱き上げると丁度願い砂の存在が脳裏にちらついて、早く使ってみたいという気持ちに駆られてしまいそうになる。
 でも、佳凪が寝る前にと言った理由があるはずだと思い直し我慢した。
 夕日が沈む頃、ルナは元気いっぱいで活発的に動き回る。動きがとにかく速くてすごい。
 私は猫専用のおもちゃを取り出してルナと一緒の時間を過ごした。